劇場公開日 2012年4月28日

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孤島の王 : 映画評論・批評

2012年4月17日更新

2012年4月28日よりヒューマントラストシネマ有楽町ほかにてロードショー

クジラの勇姿が孤島の閉塞を打ち破り、映画の緊迫と闘争力を高めていく

刑務維持の必要にかられて?の19世紀の発明品に英語名<ユーチカ・クリブ>の矯正ベッドがある。ユーチカは矯正院のあったアメリカの地名。クリブは落ちないように格子の柵に囲われた赤ちゃんベッドだが、上にも鍵つき格子を付けて立ち上がれなくした大人用ベッドはとても可愛いとはいえない。手の施しようのない反抗者をぶち込んで置くための発明品だが、「孤島の王」にこのベッドが登場する。そこに入れられるということは相当な反抗的態度を示さなくてはならない。そう、主人公の少年はついにそこにぶち込まれることになる。

しかも厳寒の小屋の中だ。ノルウェーのオスロ沖の孤島、と聞いただけで寒い。厳寒のイメージでからだが震えるが、そういった島に設営された少年鑑別所とはいっそう寒々しい。寒々しい風景の中でぶち込まれた少年たちの生命の息が白く吐き出され、これが熱い。1915年に実際に起きた事件が元になっているらしいが、そういった時代的な古さというものはほとんど映像からは感じない。この閉塞感は現在(のわれわれ)と地続きのものといっていいからだ。

寒々と荒れた海を行くマッコウクジラの勇姿が何度も登場する。少年はクジラの銛打ちで、彼の生きるビジョンは何本も銛を打ち込まれながらなかなかくたばらなかったクジラなのだ。仲間にクジラの話を何度も繰り返していくうちに、クジラは不屈と逃走、闘争の象徴として彼の中で聖なる存在へと昇華されていく。クジラの映像が閉ざされた島の閉塞を打ち破り、映画の緊迫と闘争力を高めていくのだ。このクジラの映像が効いている。監督マウリス・ホルスト。今や、<北欧圏の顔>となったステラン・スカルスガルドがこの作品でも院長として島を管理し、映画を締める。

(滝本誠)

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