「ゾンビ映画が好きではない理由」ワールド・ウォー Z うそつきかもめさんの映画レビュー(感想・評価)
ゾンビ映画が好きではない理由
はじめに言っておきますが、私はこの映画、ずいぶん頑張っているいい作品だと思っています。それでも、ゾンビが出てくる以上、一段価値が下がるのが残念でなりません。ジャンルとして、ゾンビを題材にしたものが好きになれない明確な理由があるからです。
なによりも、彼らの行動原理が合理的でないことに尽きますが、
・噛まれたらうつる
・猛獣的にパワーが増す
・知性を失う
・頭を破壊しなければ死なない
などの基本的フラグに加えて
・烏合の衆と化す
・最終目的が何か分からない
・道具を使わない
という、およそ理解できない行動をとることです。
そして、この手のジャンルに共通するドラマとして、
・身近な人物がゾンビ化して戦わざるを得ない葛藤
・警察、軍などが機能しなくなるパニック
・家族は身を寄せ合って逃げ惑う
・根本的な解決策は見つからないまま、限定的に危機を脱出する
たいていは、こんなお話が作られているように思います。
もちろん、純然たるゾンビ映画も、相変わらず盛んに作られているようで、
・基本的には呪いをかけた死者がよみがえる
・映画の目的は観客を恐怖に陥れること
・低予算で、玉石混交だが、ほとんどは石ころ
・ゲテモノ映画好きが、カルト的にもてはやす
まあ、こんな感じで、ゾンビ映画には何となく手が伸び難い状況にあります。
それでも、この映画、ゾンビ化する人類を「蔓延する奇病」だと考え、その危機を脱するという不可能に近い難題に挑む主人公の行動を追ったドラマと考えれば、とても優れた作品です。
何よりも、身の回りからどんどんエスカレートしていくパニック描写は、とてもリアルで迫力があり、そこから必死で逃げ惑うブラッド・ピットの演技は、他の作品では見られないほどに凡人の中の凡人です。
果たして彼は世界を救うことが出来るのか、最後まで一気に見終わる一本。
ゾンビに偏見を持たずに、ちょっと頭を柔らかくして楽しんでほしい一本です。
ところで、チョイ役で、『スコーピオン』の主演俳優が出ているのを見つけて、ちょっと嬉しくなりました。彼がどうなるかも含めて、笑っちゃいましたね。