「グローバル世界を急襲する怒りのウイルス」ワールド・ウォー Z Garuさんの映画レビュー(感想・評価)
グローバル世界を急襲する怒りのウイルス
強い感情には、強い感染力がある。中でも怒りの感情は、質の悪いウイルスと同じで、極めて感染力が強い。 例えば、集団の中にストレスを抱えてイライラしている者が一人でもいると、周りの人間もその怒りに同調してイライラし始め、そのうち集団全体が殺伐とした雰囲気になる。 中には、重症化してしまい、激しい怒りの症状を爆発させる者も現れる。 我々の誰もが、このウイルス感染を経験している。
ワールド・ウォーZは、強力な怒りのウイルスが蔓延したグローバル世界を、「架空のゾンビ」と「現実のウイルス」を絡ませて描いた作品である。 旧来のゾンビものと違うのは、ゾンビという症状?との闘いよりも、パンデミックとの闘いに焦点を当てて描かれているところだ。 伝染病の調査経験がある元国連職員がワクチン確保に奔走するという設定は、具体的かつ現実的。ガラス張りにしたゾンビ映画とも言えるだろう。
ゾンビが全速力で走って追いかけて来る今作には、酔っ払いのように千鳥足で近づいてくる初期のゾンビのような、重く息苦しいリアリティはもはや見られない。
ただ、今や21世紀。 ネットを通じて古今東西の怒りが瞬時に全世界へ拡散する時代である。 ゾンビを使って怒りのウイルスの世界的な蔓延とパニック、そしてその解決までを描いた本作は、近年のゾンビ映画のひとつの帰結と言えるだろう。
人間が抱く本質的な恐怖を味わうゾンビ映画というよりは、 ブラッド・ピットの英雄的な活躍を楽しめる、良質な娯楽パニック作品でもある。
コメントする