「悪くない笑顔の確率。」50/50 フィフティ・フィフティ ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
悪くない笑顔の確率。
「(500)日のサマー」でも不運を軽快に演じてみせたJ・G・レヴィット。
生真面目なのに笑いを誘う絶妙な顔をした俳優だと思う(誉めてます)
…というわけで今回の役も彼ならでは!と云わんばかりの適役。
しかし辛いのは生存率50%のガンに冒されてしまった青年ということ。
製作も兼ねたS・ローゲンのお下劣な励ましに支えられ^^;
自己中な彼女B・D・ハワードに振り回されながら闘病生活、これって
彼じゃなければ絶対耐えられないだろうと、そんな風にすら思える^^;
そう、普通ならお涙頂戴モノの境遇ドラマになるべきところを、
今作はまったく違う角度で描き、普通の青年が、普通に闘病する姿を
やたら軽快なサウンドに包みながら、笑いを織り込みながら描き切る。
とはいえ、きちんと恐怖を感じたり、切なかったりはしている。
それを正面から見せないところがニクイというか巧いのかもしれない。
なんだこれ?と思っていると、後半、彼がものすごい大声を張り上げる
シーンがある。普通の弱い人間ならば、もっと早くに叫んでいただろう。
辛い、苦しい、悲しい、腹立たしい、泣きたい、叫びたい、喚きたい、
誰かにうんと、甘えたい。
人間の感情はこうでもならないと、なかなか爆発しないのかもしれない。
そんな時、いつも傍にいるのに感動的な言葉を与えるでもない相手が、
不器用で特にアテにもならない相手が、恋しくてたまらなくなる不思議。
そんな心臓の鼓動が聞こえてくるような初々しくて切ない作品である。
…何しろこんな闘病ドラマは観たことがなかったので、一度お薦め^^;
親子関係の描き方も(多くはないが)絶妙な見せ方をする。
A・ヒューストンの顔はやはり計り知れず怖いのだけれど(汗)
この母親の気持ちを知らずして、なにが息子だ!病気だ!とすら思える。
人気のA・ケンドリックは相変らず可愛いが、セラピストはあのくらい
ドジでもいいんじゃないか?なんて思えてしまうし。
こんな若い女に俺の苦悩が分かってたまるか!と虚勢を張る主人公が
おめおめと電話をかけるシーンも感動的。
的確なアドバイスなど、吐いて捨てるほど分かりきった人間にとって、
ただ真剣にうんうんと悩みを聞いてくれる相手ほど有り難いものである。
まぁしかし^^;
ここまで周囲がおかしい人だらけ、っていうのも珍しいんだけどねぇ。
何ともいえない面持ちの中、どうなるんだ!?と思わせる後半といい、
どこまでも50%の確率で病だけでなく恋愛も描き切るさじ加減の巧さ。
最後の最後まで人生は捨てたもんじゃないと、かなり思えてしまう力作。
(だけどS・ローゲンの顔が苦手だ。何度見てもダメ。50%にして下さい^^;)