劇場公開日 2012年3月24日

  • 予告編を見る

「主役はマリリンにあらず」マリリン 7日間の恋 マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0主役はマリリンにあらず

2012年3月28日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

楽しい

幸せ

モンローは、ひとりの女として愛されたい一方で、大衆の視線を感じることに歓びを感じる。天性のオーラを持ち、プライドも高いが、なにをしたらファンが喜ぶか知っている。根っからのスターなのだ。

明るく茶目っ気があるように見えて、神経は繊細で、演技することに対しても納得できるまで自分を追い詰める。
そこに初めて体験する海外での撮影のプレッシャーと、夫との確執が重なり、演技方法まで監督と意見が合わず、完全に自信を喪失する。
そんな彼女の救いが、第3助監督のコリン・クラークだった。

ここまで書くと、邦題から受ける印象も相まって、世紀の大スターのうたかたの恋を描いたスキャンダラスな物語のように思える。
だが、この作品をよく見ると、マリリンはコリンに逃避したのであり、そこに多少の愛情と感謝があったではあろうが、決して恋焦がれたのではないと分かる。
むしろ、恋する1週間を過ごしたのはコリンのほうであり、この物語の真の主人公は彼なのだ。

そのコリンを演じるそばかす顔のエディ・レッドメインが清々しくていい。どんな作品でも主役に向くほどのインパクトはないが、共演する女優に輝きを与える俳優だ。その理由はわからないが、エディが一緒だとマリリンのミシェル・ウィリアムズはもちろん、エマ・ワトソンや高齢のジュディ・デンチまで輝きを増す不思議でお得な存在だ。

ミシェル・ウィリアムズは、モンローを相当研究したのだろう。その成果はもちろんだが、表情はミシェルのほうが明るい。とくに上目遣いの彼女の表情は愛くるしい。

忘れてならない登場人物がもう一人。
マリリンとコリンを見守る、執事兼護衛のロジャー・スミスを演じたフィリップ・ジャクソンが、酸いも甘いも知る男の情を見せる演技で作品を締める。

時間(とき)が過ぎゆく。
いつまでもコリンに甘えるわけにいかない。コリンに本気で恋するわけにはいかない。ワタシは女優。
モンローの目がプロの目に変わる。と同時に、また女の幸せをひとつ失う哀しみ・・・。
そんなシーンに流れるナット・キング・コールの「枯葉」は切なすぎる。サイモン・カーティス、これが長編映画初監督作品とは思えない。
高級ブランドのポスターを思わせるスチールをエンド・クレジットに使うなど、最後まで演出が冴える。

マスター@だんだん