「重く苦しい作品」KOTOKO R41さんの映画レビュー(感想・評価)
重く苦しい作品
純文学的邦画作品
コトコの心的障害は概ね先天的なものなのだろう。
故郷の沖縄に居ればあまり表には出ないと思われるが、都会では顕著に表れるようだ。
彼女の苦しみは、誰にもどうすることもできない。
それは、彼女が握りしめて離さないようにしているこの世界の認識で、そのため彼女が否応なしに見てしまう世界だ。
その一つが、どうしても見えてしまう人の二面性。
それを物質的に見てしまう。
表面上の笑顔とは違うその人の内面、裏側、攻撃性、欲望…
その攻撃性の部分が本当に攻撃してくる幻覚
さて、
小説家田中という男は、バスの中で彼女の歌を聞き一目ぼれした。
ストーカー以上に彼女に付きまとう。
コトコは彼にひどい暴力を振るう。
それは自傷行為を少しだけ変更したに過ぎなかった。
それでも必死に耐える田中だった。
しかし彼は去った。
それは物語の設定上の理由だからだろうか?
病気が治ったと診断され、一緒に暮らせる通知が来た日のことだった。
彼もまた、似たような病気だったのだろうか?
正常値になった彼女に興味をなくしたのだろうか?
田中の不在がコトコを再び闇へと落としてしまう。
せっかく息子との暮らしが始まったにもかかわらず、彼女はすぐに病気を再発する。
どんな原因かわからないが、どんなことでも起こり得る。
事故、事件、そして息子が死んでしまうという恐怖
どうせ死ぬなら、いっそ私が殺してあげる。
そして殺した幻覚を作る。
もう、何が本当で幻覚なのかさえわからなくなっていた。
息子は生きていた。
小学生になっていた息子。
隔離病棟で暮らすコトコ
精神病で苦しむ人を描いた作品
リアルで重い。
帰省した時の家族とのひと時の幸せが、またリアルで彼女の苦しみをコントラストしている。
コトコの見る世界。
リストカットが存在を証してくれる。
彼女はきっと美しいものだけを求めているのだろう。
この世界の二面性に対する嫌悪感
このコントラストを単なるコントラストとして受け入れられない。
美しいものだけしかない世界を渇望しているかのようだ。
息子が面会に来た時一言も話せなかったのは、それが現実かどうかわからなかったからだろうか?
自分だけが実在していないように思うのだろうか?
ただありのままを描く。
それが純文学なのだろうか?
それにしてもCoccoさんはこの役をよくやり切ったと思う。
コトコの持ってしまった世界観に涙した。