劇場公開日 2011年10月1日

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「[ビョルン・アンドレセン(2025年10月25日没・70歳)トリビュート]」ベニスに死す yasacawaさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 [ビョルン・アンドレセン(2025年10月25日没・70歳)トリビュート]

2020年9月15日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

泣ける

悲しい

今年(2025年)10月25日、ルキノ・ヴィスコンティ監督『ベニスに死す』で〈美少年〉タッジオを演じたビョルン・アンドレセンが、70歳で亡くなった。

映画『ベニスに死す』は、全編に流れるマーラーの交響曲第5番 第4楽章〈Adagietto〉を、決定的にポピュラーにした。僕もまた、その耽美的な静謐感に浸るため、50年以上にわたりこの曲を繰り返し聴き続けてきた。だがこの曲は、アンドレセン本人にとっては、長らく“つらい曲”でもあったのだということを、今回の報に接して初めて知った。

映画公開(1971年)から50年後の2021年、本人の証言:サンダンス映画祭で発表されたドキュメンタリー『世界で一番美しい少年(The Most Beautiful Boy in the World)』によって、その背景が明らかになる。

彼がヴィスコンティや周囲の大人たちによって、「美」の名の下に消費され、性的に搾取されてきたと本人が告発する作品だった。

2つの作品を、差し引きの引き算に解消せず、同じ重さとベクトルで丸ごと観たい。それは作品の〈美しさ〉を守るためでも、ヴィスコンティを免罪するためでもない。その美のために差し出された、ビョルン・アンドレセンへのオマージュとして。

 | 映画は“美”を浄化した。
 | だが、その美に選ばれた少年は、守られなかった。
---- ドキュメンタリー『The Most Beautiful Boy in the World』日本語版キャッチコピー

R.I.P.

yasacawa
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