「リド島の海岸」ベニスに死す ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)
リド島の海岸
若さと老い、
果たして老いは醜いものなのだろうか。
髪を染め、化粧をしても、あの醜悪なギター弾きとさして変わりはないではないか。
魂を悪魔に売り渡さないと良い芸術はできないのか
道徳と背徳
家族と孤独
美しい少年と老いてゆく男
売春婦の弾く抑揚の無いエリーゼのためにと、タージオの弾く溜めのあるエリーゼのために
山間の風景と海
喧騒のベニスと、人々が立ち去ったベニス
様々な対比が繰り返される
タージオのアッシェンバッハを見つめる瞳
タージオはアッシェンバッハの中に一縷の美しさを見たのではないか
美しさとはうわべではなく内面にあるのだと
美しさとは矛盾の上にあるのではないと
アッシェンバッハはタージオの美しさに惹かれたのではなかったか
しかし、それは愛に昇華していく
エンディングのタージオに降り注ぐようなリド島の海岸の海のきらめきは美しい
アッシェンバッハは髪から染料が溶け落ちて死んでゆく
しかし、美しさは何かを知って息絶えたようにさえ見える
二人の指の指し示した先には何があるのか
二人を結びつけたサインなのか
これを観て、リド島の海岸に行ってみようと思った
多分、生まれて初めて少年に対する愛情を観たのはこの映画だ。
美少年とは、タージオのことだとも思った。
感慨深い映画だ。
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