「今はすっかり表面化してる、今こそ見たい!!」サウダーヂ redirさんの映画レビュー(感想・評価)
今はすっかり表面化してる、今こそ見たい!!
念願の空族、サウダージをスクリーンで拝見。短いカット、ぶつ切りのシーンの連続がリアルさを出している。噂通り素晴らしい作品だがわかりにくいところもあり、今回復刻されたというパンフレットを購入。ロカルノ映画祭での会見でも他のインタビューでも、まだあまり移民の問題外国人の問題は表面化されてない、問題として認識されてないというお話があったが、それより前の時代世代のアジアやブラジルからの出稼ぎ(パンフレットにしっかり記載あり、素晴らしい)、コミュニティのことも監督より少し年長の自分はいろいろ思い出し、研修制度という公的機関公認の搾取とか、今では牛久、大村、品川などの入管での非常識、国家による犯罪レベルの日本の難民移民施策、デジタルリマスター版を拝見する2021年はコロナと相まって、本当に醜悪な事態となっている。この映画の背景、時代はリーマンショック、北京オリンピックとのことですが今はすっかり表面化した上でさらに悪い状況。それはそれとして、ブラジルっ子のラップも地元っ子のラップもなかなか突き刺さる。日本は伝統的に私小説のお国柄、ブラジルはカトリックが多いのかな神の慈愛と隣人愛がラップに現れる。故郷となる自国に対する考えも、日本は右が左かなんもなしか、ブレ幅がすごい、軸がないから。
それはそれとして、映画として表現としての勢い、伝えたこと、が映像、役者、台本、音楽全てからガンガン伝わってくる。
東京の人から見ると、地方都市(失礼な言い方だが、、東京大阪以外という意味で)のありよう、暮らし、風景は、私には外国の同じレベルくらいに、違うなあ、と思う、そのことがすごくリアルに伝わってきた。山梨だから、そんなに東京から遠くないんだけど。タイ、ブラジル、フィリピンの人たち、山梨のローカルの人たち、東京行ってやばいことになり壊れちゃった人もいて、この、すごい違和感、差異を改めて認識した。他者、他人との関わり、て、ほんとに土の匂いを知ってる知ってないに関わらず土の匂いがあることをまず知ろうとすること、その土を掘ったら地球の裏側のブラジルよね、タイも近くよね、て思うし、私小説的に自分の周りの小さな半径で生きてる日本の人日本社会は自ら世界を狭くして世間を小さくして、そしてめっちゃその中で迷惑かけて外国の人にまで迷惑かけてるんじゃない?ブラジル人が介護する老人ホームのおばあちゃんの家族がブラジル移民した、貴重なコーヒーを送ってもらった、あなたがたの国によくしてもらった、とお礼を言う場面、このシーンとてもすごい、一言一言に深い意味と思いがある、そして連鎖を強く意識する。
監督さんたちがおっしゃる通り何度も見るべき映画だし何度も見たくなる。
パンフレットは渾身の、というにふさわしい、マストリードだと思う。