劇場公開日 2011年11月3日

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僕たちのバイシクル・ロード 7大陸900日 : 映画評論・批評

2011年10月25日更新

2011年11月3日より東京都写真美術館ホール、銀座シネパトスほかにてロードショー

淡々とした自転車の日々が愛おしい、とびきりのロードムービー

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ただひたすら、広い大陸を自転車で走り続ける。そういう願望は、少年少女だったころにたぶんだれもが一度は抱いたことがあるんじゃないだろうか。私もそうだった。だから今でもふらりと自宅から愛用の自転車を漕ぎだして、多摩川のサイクリングロードを走ったりする。川の上流に向かって走っていくと、山なみの向こうに見知らぬ世界が開けているような夢を少しだけ見られるからだ。

この映画はその夢を実現してしまった2人の若者のドキュメンタリーだ。イギリスから英仏海峡をフェリーで渡り、フランスからロシア、そしてシベリア鉄道を使って中国へと移動し、過酷な自転車の旅を続ける。映像は2人の手持ちカメラで素人撮影されてるし、とくだんドラマや物語が展開するわけでもない。ただひたすら淡々と自転車の日々を撮り続けていくだけだ。でもその少しざらついて時にはぶれ、時にはピンぼけになる映像がとても美しい。

猛烈な速度のクルマが行き交うロシアでは命の危険を感じ、中国では排気ガスで顔が真っ黒になる。時には旅の経過を書いたパンフレットを販売して旅費にしたり、そして南極では転びそうになりながら氷の上を滑走する。自転車はしょっちゅうパンクし、怪我も絶えない。いやだいたい超長距離ツーリングなのに、短パンにサンダルという恰好なのはどうなんだろう。途中しばらく一緒に走る3人目の若者なんてママチャリだし……。でもそういうエピソードのひとつひとつが見ているうちに途方もなく愛おしくなってきて、気持ちは若者たちにすっかり寄り添ってしまう。

本当にとびきりのロードムービーだ。この映画、自転車を愛している人みんなに観てほしいと思う。

佐々木俊尚

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