「30分長い『完全版』を観て再評価を。」エイリアン3 image_taroさんの映画レビュー(感想・評価)
30分長い『完全版』を観て再評価を。
映画史に稀に見る最高の続編映画との誉高い『2』のあと、生き残ったはずのニュートとヒックス伍長が死んだところから始まるが故に「前作までの流れを台無しにした」と受け止める向きが多かったと思うが…熱心なファンは、『2』のエンドロールの一番最後にフェイスハガーが這い回るような音が流れて映画が締め括られることを知っているはず。ならば、それを受けて作られる続編が、こんな展開にもなり得る可能性をそもそも孕んでいたということだ。ファンが気に入る気に入らないに関わらず。
確か昨年だったか、主演のシガニー・ウィーバーが「私たちは良い映画を作ったと思う」と本作を擁護する発言をして、それがニュースになって流れていた(Webを検索すれば今でも記事は読めます)。フィンチャー監督が本作を否定的に語ったのを「それは残念」だとも語り、監督が日々奮闘していたことを高く評価する発言をしていた、というような内容だった。
確かに、劇場公開版を観る限り、一作目・二作目のクオリティには遠く及ばないとの印象は拭いきれない。しかし、『完全版』を初めて鑑賞した時、初めてこの作品に触れたかのような新鮮な気持ちになったのを覚えている。30分も長くなっているが故に、相当にシーンが加えられており、劇場公開版では無理矢理に短く編集されていたことがあからさまに分かる。『完全版』ではテンポやリズムが相当に改善されて、撮影された映像をじっくり味わえるようになっている。この暗さ、ジメジメした陰鬱とした空気感は間違いなくフィンチャー監督のものだ。
エンターテイメント性の豊かな『2』と比べたら、今作は相当に悲壮感が漂う作風であるが故に、気に入らなければどうにもならないかもしれない。でも、もし『完全版』の形で劇場公開されていたら、今のような散々な評価にはならなかったのではないか…そんなことを私は夢想する。
少なくとも、『完全版』を観る限り、劇場公開版とは相当に別物になっており、劇場公開版の評価のままではいられない(星は『完全版』に対する評価だ)。是非、ご自身の目で確かめていただきたい。