「無自覚な人たちへ」ヘルプ 心がつなぐストーリー つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
無自覚な人たちへ
ヘルプを雇っている白人の若奥様連中がアフリカへの支援でチャリティーオークションを開催する話を序盤からしている。おいおい、アフリカの人たちだって黒人だぞ、目の前のヘルプの人たちに酷いことしておきながらチャリティーとは笑わせてくれるなどと思った。
と同時に、この物語のラストは本を出版することになると思うが、そんな本が肝心の白人連中に読まれることはあるのだろうかとも思った。
この一見関わりのない二つの事柄は繋がっていた。
アフリカの人たちは直接自分とは関係ない人たちで、だから自己満足のために支援したりするわけだが、本作の中で出版される本も活字になり一瞬目の前から登場人物が姿を消すことでアフリカの人たちと同じような立場になった。
つまり、どことなく自分とは関係のない人たちになり、本は読まれることとなる。しかし当然、中に書かれている人たちは今目の前にいるヘルプの人たちの事であるから、そこでやっと今まで無自覚に行っていた差別的な事柄について気づくことになる。
一番の問題は、無自覚だったということだ。黒人に対する横暴が当たり前すぎて、問題であることすらわかっていない人たち。この人たちに本という形で触れさせることが出来たことは良かったのだろう。
無自覚に差別的な若奥様の対の存在として、ジェシカ・チャステイン演じるシーリアが登場する。彼女は見た目こそ、町の同世代の奥様方に迎合するために派手なバービー人形のようだが、内面は全く違い、差別的な人物ではない。
それは彼女が田舎育ちで差別などない環境で育ったからで、無自覚に非差別的なのだ。
無自覚に差別的な者と無自覚に非差別的な者。よくも悪くも人間は環境の生き物であるから、シーリアのような人物が育つ差別のない環境を作っていくことが真に大事な事だと思った。
とまあ、色々書いたけれど、もちろん作品のメッセージ性は大事だが、それよりも面白く観ることが出来たのが一番良かった。
監督は作品のトーンを大事にしているような話をしていたが、そのおかげか暗くなりすぎず笑える場面もあったり明るいシーンもあったりと、バランスよく娯楽性も備えている。
脚本が上手かった。