「ブルテリア万歳。」フランケンウィニー ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
ブルテリア万歳。
T・バートン'84年の同名短編フィルムを、
ストップモーション・アニメで長編リメイク化した作品。
この元ネタとなった実写版も、かなりよく出来ている。
彼がいかに犬好きの妄想(映画)少年であったかが伺える。
私はこのモデルとなった「ブルテリア」という犬の顔について
正直可愛いと思ったことは一度もなかったのだが(ゴメンね)、
少し前にお散歩している彼(彼女?爆)を見かけたことがある。
お兄さんに連れられてひょこひょこ歩いていた彼は、沿道の
手すりに繋がれると、ちょこんと座って飼い主を待ち始めた。
その振る舞い姿に、あらイイわ!この子!と目が釘付けに。
表情は確かに少ないが(変わらないのよね)微妙にコミカルで、
ハイセンスな個性犬(チワワ系とは違う方向の)だと思った。
病気には弱いらしいが、愛犬となれば手厚くお世話するもんね。
今作で描かれたスパーキー、お目目がでっかく垂れ下がっても、
愛くるしい表情と動きは変わらない。
犬好きには堪らない、そんな気持ちを消化させてくれる作品。
まぁしかし、あれだ。バートン・ワールドがことごとく展開する!
スパーキーより人間達の顔なんか、すべて怖かったぞ!(爆)
ああいう特化した顔の作りも彼ならでは^^;で、慣れてくると、
あのくらいでないとつまらなくなってくるのがご愛嬌。
しかし描かれる世界は実に狭く(爆)、いたいけなオタク度全開。
友達もいない科学少年のヴィクター(Fシュタインだわぁ~)が、
死んでしまった愛犬を禁断の科学実験で甦らせてしまうお話。
周囲にバレないようにと彼を屋根裏に隠すヴィクターだったが、
まさか自分が死んだとは思わないスパーキーは、思いのままに
外へと繰り出しては、クラスメイトや住人達に見つかってしまう。
犬の本性やその習性を熟知しているバートンだけあって、
ことのほか犬の動きが素晴らしくリアル。しかもあの顔で可愛いv
隣家のプードルに抱く恋心や、ボールを見ると追いかけてしまう
あのしぐさ、もう可愛くてたまらん!甦ってくれてありがとう!と
言いたくなる愛らしさ。私だってあんな技術を持てたならば、
まず失ったペット達を生き返らせるだろうとまで思ってしまうよ。
…だけど。
禁断の実験で生物を甦らせた代償は、クラスメイトが繰り返した
実験によって肥大化し、街を混乱へと陥れる。ヴィクターの想いとは
裏腹に、スパーキーはバケモノ犬のレッテルを貼られ追われる。
その後、火災に巻き込まれたヴィクター達を助けるため奔走した
スパーキーは力尽きて瀕死状態となり、そして…。
ヴィクターに科学実験を教えたジクルスキ先生の言葉が印象的。
…君は、その実験を楽しんでやれたのかね?
スパーキーを取り戻すべく願いを込めて挑んだ最初の実験と、
クラスメイトに嫌々方法を伝授した二度目の実験の成果は明らか。
この根本心理が、ラストのあの展開へと結びつくのだろうが…。
かなり賛否両論なんじゃないか、とは思う^^;
父母がヴィクターに語る生死論は真っ当至極なものである。
だけど、科学では割り切れない想いを大切にして欲しい部分もある。
悪意で叶えようとすれば失敗し、愛で叶えようとすれば成功する。
ディズニーがバートンに促したあの結末の本意がどうであったか、
彼がどんな想いであのラストを作りあげたのかは分からないが、
図らずも子供時代に抱いた、もし願いが叶うのなら…という祈りが
通じたファンタジーである…と、そう思いたい。
ともあれ、愛らしいスパーキーの姿は深く胸に焼きついてしまった。
(珍しく字幕版が上映されている。頼むから正月までかけてくれー!)