「素晴らしかった」もうひとりのシェイクスピア 古泉智浩さんの映画レビュー(感想・評価)
素晴らしかった
1600年前後のイギリスという全く馴染みのない世界が舞台で、登場人物が多くてややこしい上に時系列も前後するので、これはついていけないかもと不安に思っていたのだが、意外とすっきり見やすくて、いつの間にか没頭していた。けっこう長い映画なのに、全く時間が気にならないくらい面白かった。
何が素晴らしいかと言えば、シェイクスピアの本体である、エドワードがお金でも名声でもなく、ピュアに創作を人生の仕事として取り組んでいるところだった。もちろんその創作で、敵を失墜させようとしたり、恋の手管として活用したりもするのだが、それも含めてすべて創作の糧として、どっちが先か後か分からないくらい人生と創作が密接に不可分であってこそまた創作ではないかと言っているかのようであった。
ベン・ジョンソンを実はエドワードがその実力をとても認めていて、彼の賞賛を一番求めていたというのも非常に感動的であった。それがベンには呪いであり、ウィリアムが馬鹿だから気にしていないかもしれないけど、彼にとっても呪いであった。どうあがいても太刀打ちできないほどの才能が周囲を苦しめていた。
あの息子、馬とか兵隊引き連れて城に行ったらそれは、どう見てもクーデターにしか見えないだろ、と思った。一人で徒歩で行けよ。
エリザベスが大して賞賛すべき人物として全く描かれていないところも面白かった。
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