劇場公開日 2012年9月28日

  • 予告編を見る

「とてもよかった」ボーン・レガシー 古泉智浩さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0とてもよかった

2012年9月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 ボーンシリーズの原作であるラドラムの『暗殺者』を高校生の時に読んで、それが初めての海外作家小説体験だったような記憶がある。とてもワクワクして読んで、そんな高度な知性を必要とするような読書を自分も楽しめて非常に嬉しかった。しかしそれも今にして思うと別に高度な知性が必要な行為だったわけではなく、穴も多い小説だったような気がする。

 そんな乗れない穴がボーンシリーズの映画を見ると非常にあらわになった。まず、記憶をなくして他人に意志を操作されるような男が高度なミッションを遂行するほどのメンタルを保てるだろうか。『ボーンレガシー』に登場した研究室のおじさんみたいに一目でノイローゼみたいだと分かるような、あれこそがそれではないかと思っていた。

 原作はどうだったか忘れてしまったのだが、超一流のエージェントが衆目にさらされる状態でド派手な立ち回りを繰り広げるだろうか。襲うほうも襲われるほうも頭が悪いと思い、身体能力は高くても全体的にレベルが低いと感じさせられた。

 更に、ボーンシリーズのカメラがグラグラしてやたらと近いショットが多く、細かいカット割りで何が起こっているのかさっぱり分からないアクションも大嫌いだった。迫力は伝わるものの、理解しようとするのがバカらしくなるし眼が疲れて眠くなる。

 また、マットデイモンがもっさりした外見なのにやたらと天才とか一流の人間を演じているのも全然納得できなかった。今回はジェレミー・レナーが破格の能力を持っていながらも、それが薬のせいという根拠を示していてとてもよかった。

 そんなボーンシリーズに対する不信や不満が『ボーンレガシー』では非常にクリアされていて、非常に腑に落ちる内容だった。ただ、作品が2時間20分もあって長くて飽きたり退屈する場面もあった。

吉泉知彦