「派手な逃走劇ばかりでなく、破綻のないシナリオとワシントンの太々しい演技に大満足です」デンジャラス・ラン 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)
派手な逃走劇ばかりでなく、破綻のないシナリオとワシントンの太々しい演技に大満足です
とにかく逃走劇としてカーチェイスがつきものですけど、南アフリカのケープタウン市外で白昼堂々撮影されている本作のカーチェイスは凄いのです。一般車両を次々クラッシュしながら主人公が負ってから逃げ回るシーンはリアルそのもの。スタジオセットでなく、ケープタウンの往来でどうやって撮影したのか疑問に思いました。
またケープタウンの白人が潜入するには余りに危険なスラム街にもカメラは堂々と入っていきます。アメリカ本国ならまだしも、南アフリカのロケでよく摂れたな感じました。
そんなリアルティ溢れる映像に負けないくらい演技面でも出色の出来。特に世界的犯罪者トビン・フロストを演じるデンゼル・ワシントンの人を喰ったような太々しい態度は、いかにも大物スパイとしての貫禄を感じさせました。そんなフロストの身柄を確保したばかりに、一緒に敵の襲撃を受けることになった新米CIAのマットを演じるライアン・レイノルズは、これまでのヒーローとしてのオーラを一蹴。何とも冴えないスパイ見習いの新米スタッフぶりで、ベテランであるフロストと対照的なコンビを引き立てました。
本編の面白いのは、フロストが単なる悪役ではなく、彼なりの正義で世界中のスバイ組織の腐敗と闘っていたことです。フロストがCIAを裏切ったのも、そして用のないはずのケープタウンまで出向いたのもスバイ組織の腐敗と関係があったのです。
マットは終盤でフロストから全ての真実を聞き出したとき、フロストが暴こうとしていたスバイ組織の腐敗の告発を自らが率先して行おうとします。それは世界中のスバイ組織から命を付け狙うリスクを負うものでした。けれども、マットはそれに怖じることなく決然と立ちあがる訳なんですね。
このドラマは、逃走劇だけでなく、フロストが背負っている秘密の謎解きと見習いスパイとして青臭かったマットが一流のスパイとして変身するところが見どころだと思います。
最後に所属組織にスパイとして認められたマットが、身の安全のために別れた彼女を遠巻きにして眺めるシーンが意味深でした。マットが持っているで世界中のスバイ組織の腐敗データのその後の展開のなかで彼女を巻き込んで、壮大なバトル合戦となる続編に繋がっていくのかもしれません。
とにかく最初から最後まで緊迫感あるアクションシーンの連続で目が離せなくなる傑作です。午前中に見た『トータル・リコール』もアクションが派手でしたが、それを大きく上回って手に汗を握る展開を見せてくれます。