「素人強盗が主役でも説得力は欲しい所」ペントハウス 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
素人強盗が主役でも説得力は欲しい所
狡猾な大富豪vs“持たざる”庶民。
いいですねぇ、盛り上がる図式ですねぇ。
こういう話は仇役が悪ければ悪いほど盛り上がる訳で、
その点じゃこの大富豪はホントにヤな奴だわ。
従業員の年金をまるまる騙し取り、自殺を図った従業員の事など気にも留めず、
歯向かう者も警察も金に物を言わせて封じ込めるド悪党。虫酸が走るぜ!
挙げ句は大スター・マックイーン様の車をいじくり倒す鬼畜の諸行!
ゆ、許せぬ〜!
(ん? これは違うか)
世間にゃホントにいるんだろね、こんな輩が。
仇役の悪行と悪知恵の高さ、そして主人公達の怒りが伝わり、
強盗に取りかかるまでの導入はなかなか盛り上がる。
……のだが、
肝心の見せ場で「それムリがあるんじゃ……」と感じる部分が多数あり、
気持ちの盛り上がりにブレーキがかかってしまった。
まず、常時モニター監視を続ける警備室をどう切り抜けるか?
ひねったアイデアが登場するかと期待してたが……えええええ、エロ本?!
しょーもなッ!!
しかも警備員みんな引っかかるって、中学男子かオマエら!
“バルーン作戦”てのもどんな作戦かと楽しみにしてたが、
作戦と呼べるほどのヒネリも無し。
あと、金塊の車って相当な重さだと思うんだが、
窓際から2人で引っ張り入れられるのかしら。
エレベータの重量制限とか平気かしら。
平気かも知れないけど。
それにラスト……最上階のプールに車を隠してたのもどうも納得いかない。
や、まあ、あのタワーは広いし車を外に持ち出した可能性もある訳だから
警察も発見できなかったんだろうが、なんかこう……危なかっしいというか……
成る程ここなら確かに見つからないぜ!と唸るほどのアイデアに思えなかった訳で。
素人集団という設定とはいえ、もっと説得力のあるアイデアが欲しかったっす。
主人公達の描写についても、見た目やキャラはみんな個性的なのに、
強盗の時は個性があまり出てなかったかなあ。
鍵開けの黒人姉さんくらいか。
敵味方どちらに転ぶか分からない所が面白かったケイシー・アフレックも、
結局は無難なポジションに収まっちゃったし。
エディ・マーフィももっと大暴れして欲しかった。
うー、僕が勝手にスマートな犯罪映画を期待し過ぎてたせいでしょうかね。
最後のベン・スティラーの不敵な笑みはカッコ良いし、
勧善懲悪モノとしての後味は良いのだけど、
知的爽快感には随分欠ける印象。
<2012/2/4鑑賞>