「AIJ事件の報復に参考できるかもしれない」ペントハウス 全竜さんの映画レビュー(感想・評価)
AIJ事件の報復に参考できるかもしれない
鉄壁のガードを誇る敵地に乗り込み、金銀材宝をみんなで頂戴する展開は、ソダーバーグのオーシャンズ3部作を彷彿とさせる。
しかし、オーシャンズシリーズと全く異なるのは、メンバー全員、ズブの素人ばっかしの集合体である事に尽きるだろう。
無論、華麗な手捌きで魅せる盗みのプロフェッショナル、ブラピもクルーニーもいない。
終始、行き当たりばったりで足の引っ張り合い。
チームプレーの欠片も存在せず、無謀だ計画が無謀なまんまアタフタ右往左往するリーダーのベン・スティラーの憂鬱な表情が哀愁を誘う。
そして、唯一の盗みのプロとして参戦するコソドロのエディ・マーフィーが持ちネタのデタラメマシンガンをまくし立てるアドバイス攻撃が、笑いの沸点を着火させてゆく。
前途多難一色で、成功に程遠いヤロウ共が腹を括ると、ようやく闘志が爆発。
次第に一致団結して、財宝強奪に猪突猛進していく。
危なっかしく突き進む一体感が、観客に快感を呼ぶ。
決して喜ばしいチームワークではないのに、妙に応援したくなる親近感は、落語に通ずる面白さを見いだしたからだろう。
『大工調べ』や『唐茄子屋政談』etc.銭にガメツい大家に一泡吹かせようと、長屋の連中が協力し合い、立ち向かっていく了見は、今作の強奪チームそのものである。
特にガボリー・シディベ演ずるビッグサイズの黒人ウエイトレスは、落語でお馴染みの肝っ玉女将さんに負けない貫禄を放ち、掛け合いの楽しさを増幅しているのも興味深い。
個人的にはエディ・マーフィーはねずみ小僧ばりに活躍して欲しかったかな。
現実でもそうでありたいもんだと、AIJ事件のニュース観ながらボヤく日々である。
最後に短歌を一首
『欲の皮 剥がしてバラす 塔の上 タヌキに噛ませ オケラの一手』
by全竜