劇場公開日 2012年5月26日

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「皆殺しの天使」ミッドナイト・イン・パリ kossyさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5皆殺しの天使

2020年7月10日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

 単なるフランス観光映画かと思っていたら、とんでもない方向に向かってしまう。今まで観なかったことが悔しくてたまらない思いにもなったのですが、最近見た『皆殺しの天使』(1962)のおかげでルイス・ブリュエルにプロットを教えるシーンには大爆笑!ネタ的にはBTTFみたいですが、マニアックな作品でもあるので、その辺りはウディ・アレンらしさが出ていた。

 簡単に言ってみればタイムスリップもので、フィッツジェラルド夫妻、ヘミングウェイ、ピカソ、ガートルード・スタイン、コール・ポーターなどなど有名人がいっぱい登場する。深夜12時の鐘とともにクラシックカーが現れ、飛び乗るオーウェン・ウィルソン演ずるギル・ペンダー。彼の書こうとしている小説の主人公も懐古趣味の店を経営するので、雰囲気はぴったりだった。赤みがかった映像も過去にスリップすると古びたフィルムのようにさらに赤みが増すというのもオシャレだ。

 ピカソやモディリアーニ、ヘミングウェイとも愛人関係にあったアドリアナ(多分架空の人物:マリアン・コティヤール)に惚れてしまったギル。婚約者イネズ(レイチェル・マクアダムス)のことも愛していたけど、2人とも愛することはできるんじゃないかと楽観的に考えてしまう。時代が違うからどうのこうのと。友人ポールとも親密になっていたイネズのことが心配にならない時点でアウトですけどね。

 過去から過去へ。ベル・エポックの時代。懐古主義も度を過ぎると、どんどん過去が良くなって見える。しかし、医療の問題など未来には確実に便利な面がある。ギル以上に懐古趣味だったアドリアナに愕然・・・馬車の登場もgood

 笑いの要素と英米文学の歴史、美術史を楽しむ作品。相変わらず政治ネタもあるし、プロットよりも細かなところに笑ってしまう。探偵もブルボン王朝まで行ってしまったみたいだし、オチもしっかりつけているところが凄い!レイニーデイを観てこの作品を思い出すのも致し方ない。

kossy