「美しくもグロテスク」ミッドナイト・イン・パリ ハットコックさんの映画レビュー(感想・評価)
美しくもグロテスク
ウッディ・アレン監督作品は、本作以外に『アニー・ホール』を観賞しました。独特すぎるほど斬新な演出に目を丸くしましたが、気がついたら夢中になっていました。そんなアレン監督が手がけた美しくもグロテスクな物語(だと私は感じました)。
どう表現すれば良いのか分かりませんが、要は夜になると、主人公はヘミングウェイやピカソが生きていた時代にタイムスリップしてしまうのです。そこである女性に恋をし、婚約者と彼女の間で悩み苦しむという何とも贅沢な話。
こう書くと、本作がラブストーリーのようにみえますが、僕は単なるラブストーリーではないと思っています。むしろ一番に描かれているのは、"過去への憧れと現実"です。過ぎ去ってしまったものへの執着心、これは形を変えながら今でも多くの作品で描かれています。冒頭でグロテスクと表記した理由は、これにあります。ネタバレになるので詳しくは書けませんが、"過去への憧れ"ほど怖いものはありません。最悪の場合、現実を忘れます。現実を忘れるとは、すなわち"死"です。本作は、まさに過去に殺される人物も描いているのです。それをラブストーリーという形でオブラートに包んでいるとでも言いましょうか。そういう面では、とてもグロテスクな作品だと思います。
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