「謎の欠片の繋がりが問う人命の在り方」麒麟の翼 劇場版・新参者 全竜さんの映画レビュー(感想・評価)
謎の欠片の繋がりが問う人命の在り方
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ドラマも原作も未見のため、ジャーナリストやのになぜか茶店でバイトしている黒木メイサや唐突に現れる田中麗奈看護師、部下の溝端純平etc.テレビドラマから把握してないと接点が解りづらいサブキャラが所々現れ、やり取りに戸惑う場面は若干あったものの、事件そのものの謎を仕掛ける配置が巧く、無知な輩でも面白く拝見する事ができた。
阿部寛が劇中にて
「殺人は癌細胞みたいなもんだ」
と呟くシーンがあり、
事件を機に被害者、加害者の家族が抱えていた闇が露わとなって、更に深刻化していく。
それに連れ、黙々と真相を追う阿部寛も自身の家庭内の問題を重ね、憂うという血生臭さより、家族について考えさせられるヒューマニズムが濃くなるタッチは、『容疑者Xの献身』同様、人間の関わり方を問うサスペンスとして向かい合え、興味深かった。
容疑者のフィアンセで彼の無実を唯一叫び続ける新垣結衣の苦闘が健気で胸を打つ。
ハケン、イジメ、ネット、家庭崩壊、マスコミ報道etc.現代にはびこる問題を小気味良く絡めて、全ての欠片が組み合わさった時、事件の重大さを一同が思い知る。
あの衝撃波こそ東野圭吾作品の醍醐味であり、『砂の器』『ゼロの焦点』etc.松本清張を受け継ぐ社会派ミステリーの真打と評しても過言では無かろう。
テーマがテーマだけに、説教臭さに熱を帯びてしまうのが、難点やけど、2時間ドラマをスクリーンに映したような安易な創りのサスペンスではないと断言できる見応えである。
最後に短歌を一首
『巡る鶴 血染めの翼 日本橋 溺れて浮かぶ 穴の償ゐ』
by全竜
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