「独りで種蒔いて、独りで暴れて、独りで倒れて、画に描いたような見事な墓穴の掘り方の美学」ハードロマンチッカー 全竜さんの映画レビュー(感想・評価)
独りで種蒔いて、独りで暴れて、独りで倒れて、画に描いたような見事な墓穴の掘り方の美学
原作は監督自身の経験を基にムチャに書きなぐった自伝的小説で、『GO』や『パッチギ!』に通ずる傷だらけの情景を感じた。
だが、大きく違うのは主人公の精神構造だろうか。
『GO』の窪塚洋介にしろ、『パッチギ!』の高岡蒼甫にしろ、『ガキ帝国』の趙方豪にしろ、四六時中、喧嘩に明け暮れながらも、ネエちゃんとの恋や差別、出生のルーツ、家族愛etc.に悩み、優先順位がコロコロと入れ替わって、それがヤンキーの青春じゃねぇかと論じてメデタシ、メデタシといくのがオキマリなんだが、今作の松田翔太に至っては、一貫して喧嘩、喧嘩、喧嘩である。
愛なんざぁ知ったこっちゃ無ぇやと殴って、蹴って、バット振り回しての毎日。
セックスや友情や生き甲斐は延長上の道草に過ぎない。
つまり独りで種蒔いて、独りで暴れて、独りで倒れて、画に描いたような見事な墓穴の掘り方である。
サバサバと冷めた狂気がここまで突き抜けると、潔くて共感が持てた。
『血と骨』の北野武を彷彿とさせる自業自得の人生だが、金には執着心は無く自分なりの仁義は背負って生きている。
そして、どんなに凶暴でもオバアチャンには頭が上がらないのも人間臭くて可愛い。
そういう意味では、龍平兄貴よりお父っつあんの血を濃く受け継いでいる役者なのかもしれない。
最後に短歌を一首
『月に飛び 蹴散らす傘の 血の雨や 被りて舐めりゃ 夜をこじ開け』
by全竜
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