ミケランジェロの暗号のレビュー・感想・評価
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ズボンを脱がせ!
ズボンを脱がせ!割礼してあればユダヤ人だ!運悪く包茎手術をしてあるとユダヤ人と間違えられてしまうのだ(笑)。
家族同様に育ったルディ・スメカル(フリードリヒ)。彼はアーリア系で反ナチの疑いも持たれていたが、カウフマン家を飛出しドイツへと行っていた。時勢はナチのもの。裕福だったカウフマン家の画廊と財産を奪ってしまおうとも考えていた。ヴィクトル(ブライブトロイ)の恋人レナ(シュトラウス)にも失恋した経緯があったが、ミケランジェロの絵の件で一気に奪ってしまうことに成功した。カウフマン一家は亡命という条件だったがポーランドの収容所に送られ、父親はそこで死亡する・・・その間、ユダヤ人ではないレナはカウフマン家の財産を譲り受け、ルディは自分のモノにしようと彼女と強引に婚約してしまう。
しかし、父親の機転により、ナチスに渡したのはミケランジェロの贋作だったのだ。1943年にはイタリアとの同盟のために絵を利用しようとするが、寸でのところで贋作だと発覚。収容所からヴィクトルを連れ出し、今ではナチ将校となっていたルディも同行してベルリンへと輸送機は向かう。その途中、地上からパルチザン攻撃を受け、機は墜落。重傷を負ったルディをヴィクトルが助け小屋へ連れ込み、パルチザンが追ってきたと互いの服を交換するが、小屋へ入ってきたのはナチだった・・・咄嗟の判断で、ナチとユダヤ人が入れ替わり、芝居を続けるヴィクトル。二人ともスメカルだと主張するが、誰も顔を知らなかったので、見事に入れ替わりに成功。やがて婚約者レナも面通しの意味もあり、二人の前にやってくるが、発覚するどころか、ヴィクトルとの愛が再燃。彼の計画にそのまましたがうシーンはスリリングだ。そして本物のミケランジェロの絵を手に入れるために、母親とレナをスイスに送り、ヴィクトルとルディはまたもや輸送機にてベルリンに行こうとするが、途中で気付いたナチ将校は機をウィーンへと引き戻す。そこでヴィクトルの計画は潰えた・・・が、スイス銀行には絵は預けてなく、ヴィクトルの命も危なくなるが、カウフマンの豪邸にはまたもや贋作が・・・
「私の顔を視界から消すな」という父の遺言が思い出されるヴィクトル。父の肖像画がヒントなんだと観ている者にはすぐわかってしまうが、ルディの必死の抵抗で財産を全て手に入れたところで、ヴィクトルのまたしても最後の賭け。肖像画を簡単に譲り受け、大逆転するストーリーだ。
戦争の悲惨さとか描いてる部分はないが、コミカルな部分によってナチスのバカさ加減を訴えてくる。友情の崩壊と逆転劇、終盤にはSS将校として米軍に捕えられるヴィクトルの姿もあったが、ちょっと蛇足気味。
恩を仇で返す・・
ウィーンのユダヤ人画商の息子ヴィクトル・カウフマンと兄弟同然に育てられたオーストリア人の使用人の息子ルディ・スメカルの友情と裏切り、恩を仇で返す苦い物語。裏切りをテーマに持ち出したのは作者のユダヤ観、キリストとユダの物語の裏返しの暗喩かもしれない。
第二次大戦下、訳ありのミケランジェロの絵を巡って、二人の生き残りゲームのような展開が綴られる。
生い立ちの過程で何があったかは描かれないがスメカルの屈折した感情に火をつけたのはナチスの台頭のように描かれるが元々欧州では反ユダヤ感情が根深かったことも否めない。
原題のMein bester Feindは直訳では「我が最高の敵」なのだろうがシニカルでピンとこない。かといって邦題の「ミケランジェロの暗号」が適切かといえば、暗号など出てこないのだから「ダビンチ・コード」人気に便乗したかっただけの宣伝部の思惑が透けて見える。
一連のユダヤ人の悲劇、ホロコーストものと違って主人公はお宝の絵画のお蔭で生き延びるのだが、お宝はフィクションでしょう。
彫刻のモーゼ像はローマの教会に飾られているが、モーゼの頭には角があり、力の象徴とされたが後にモーゼがユダヤ人であったことから悪の化身の証と歪められてしまった逸話がある。劇中でも指摘があったが彫刻の下絵と思われる素描に角が無いのはやはり不自然かも知れない。
絵画の行方は早々に察しがついてしまうのでミステリー感は薄い、友人には裏切られたが恋人は愛を失ってはいなかったというのが救いだがテーマであろう二人の確執の様は軽妙にも描かれるので深刻さは薄まるものの作り物的な味わいがして、興を削いだかもしれない。
運命的な
謎解きミステリーみたいなものを期待してたんですが展開が違っていたのでそこは少し残念でした。
ヴィクトルとルディ。
仲が良かった二人が人種や戦争に翻弄され対極の関係になっていく。
運命なのか宿命なのかそんな二人から紡がれる物語が面白かったです。
ナチスを扱った作品だけど、そんなシリアスな感じでもなくコメディとも思いませんが、入れ替わったとこなんかはタイミングが出来すぎていて私は笑って観てるシーンが多かったです。
最後もヴィクトルと婚約者とお母さんがまるで大怪盗の様に去っていく姿がカッコよかった(笑)
命懸けの知恵比べ。
名画座にて。
ずいぶん評価が高いのだな~と鑑賞前にレビューを眺め、
実際に観てみたら、あ~なるほどねと納得のいった作品。
ナチス・ドイツに対するバカ仕合、知恵比べ、という観点が
パロディのように散りばめられ、悲惨な時代を皮肉ることで
人々がどう生き残ってきたかを証明するような作品。
タイプは違うけど、チャップリンが成りすました(爆)、あの
独裁者と同じで、何ていい加減な奴らなんだ~と苦笑い。
こういった作品は、最悪の敵をいかに笑い飛ばせるかで
評価が決まるような面白さがある。実際には命からがらの、
最大の賭けでもあったその選択、何を守るかで人は変わる。
暗号…というだけあって、推理も絡むのだが
種明かしは中盤以降でだいたい分かる。本作はそれよりも、
この裕福なユダヤ人息子と使用人だったアーリア人息子の
立場をコロコロと変化させる騙し合いに重点を置いている。
絶対、バレるだろ!?が、バレない面白さ。バカバカしさ。
何やってんだ?お前ら~。と思えるほどスリリングな二人の
掛け合いが命懸けとは思えないほど可笑しくて笑えてしまう。
どちらかが先に命を落とすんだろう、と誰もが思うところだが、
この時代にあって、この立場にあって、危険が伴っていても
物語が続いてしまうところに奇妙な友情、連帯感すら覚える。
これが脚本家の実体験だというのだから、驚きを隠せない。
命を軽視し、簡単に抹殺を繰り返していた時代、
一族の守るべき絵画を命を懸けて守り抜いた父親の知恵と、
それを継いだ息子のアッパレな連携プレイ。何を守るのかは
その価値観に依るものが大きいが、使用人として一度も上に
上れない息子の浅はかな企みも本人に優越感を与えている。
とことん腹黒い攻めでなく、単純に陥れる浅い攻めが結局は
功を奏し、本来の人間性を浮かび上がらせる。善人ですら
悪党に化さねば生きられなかった時代の哀しみが漂う作品。
(自分の家に自画像って飾れないですよね、何かおっかなくて)
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