「命懸けの知恵比べ。」ミケランジェロの暗号 ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
命懸けの知恵比べ。
名画座にて。
ずいぶん評価が高いのだな~と鑑賞前にレビューを眺め、
実際に観てみたら、あ~なるほどねと納得のいった作品。
ナチス・ドイツに対するバカ仕合、知恵比べ、という観点が
パロディのように散りばめられ、悲惨な時代を皮肉ることで
人々がどう生き残ってきたかを証明するような作品。
タイプは違うけど、チャップリンが成りすました(爆)、あの
独裁者と同じで、何ていい加減な奴らなんだ~と苦笑い。
こういった作品は、最悪の敵をいかに笑い飛ばせるかで
評価が決まるような面白さがある。実際には命からがらの、
最大の賭けでもあったその選択、何を守るかで人は変わる。
暗号…というだけあって、推理も絡むのだが
種明かしは中盤以降でだいたい分かる。本作はそれよりも、
この裕福なユダヤ人息子と使用人だったアーリア人息子の
立場をコロコロと変化させる騙し合いに重点を置いている。
絶対、バレるだろ!?が、バレない面白さ。バカバカしさ。
何やってんだ?お前ら~。と思えるほどスリリングな二人の
掛け合いが命懸けとは思えないほど可笑しくて笑えてしまう。
どちらかが先に命を落とすんだろう、と誰もが思うところだが、
この時代にあって、この立場にあって、危険が伴っていても
物語が続いてしまうところに奇妙な友情、連帯感すら覚える。
これが脚本家の実体験だというのだから、驚きを隠せない。
命を軽視し、簡単に抹殺を繰り返していた時代、
一族の守るべき絵画を命を懸けて守り抜いた父親の知恵と、
それを継いだ息子のアッパレな連携プレイ。何を守るのかは
その価値観に依るものが大きいが、使用人として一度も上に
上れない息子の浅はかな企みも本人に優越感を与えている。
とことん腹黒い攻めでなく、単純に陥れる浅い攻めが結局は
功を奏し、本来の人間性を浮かび上がらせる。善人ですら
悪党に化さねば生きられなかった時代の哀しみが漂う作品。
(自分の家に自画像って飾れないですよね、何かおっかなくて)