劇場公開日 2012年1月14日

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「それでもポジティブなメッセージ」ヒミズ ロロ・トマシさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0それでもポジティブなメッセージ

2012年1月15日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

興奮

全編を通して貫かれてる不穏な雰囲気。
不安感は全く拭えず、鑑賞中ずっと気持ちは不安定で情緒の安静を少しも許さない。
精神の安らぎ自体赦してくれない。
ヒリヒリと痛みすら伴い兼ねない感覚で、延々と眼前の事象に固唾を飲まされる。

主人公住田は怒っている。兎に角、怒っている。

それがアッパーに向かず、向いてる方向は陰鬱だ。
厨二病感覚を極限までに拗らせきった少年住田の暴走行為。
そこに到った精神状態は、置かれた現状、生い立ちから、3.11以降の世界、映し出される瓦礫の山。惨状の光景に自身を投影させるぐらいに荒廃している。
一部の善人を除き、出てくる大人は守ってもくれず、究極のクズばかり。住田の荒みぶりも、それは仕方ないのかもしれない。

こんだけペシミスティックな要素を林立されて、ここまで観る者の気持ちを絶望の只中に叩き込んでも、スクリーンから目を逸らすことを許さないのが園子温作品。

重かった。痛かった。

のだけども、ラストは異様な程に爽やかだった。
彼等の現状は一向に好転しないのだけど。
しないのだけど、ポジティブだった。

ガンバレ。

ロロ・トマシ