「色彩豊かで鮮やかな映像に記録されたバレエ劇の「赤い靴」の素晴らしさ」赤い靴 Gustavさんの映画レビュー(感想・評価)
色彩豊かで鮮やかな映像に記録されたバレエ劇の「赤い靴」の素晴らしさ
昭和25年の日本初公開に於いて、この映画の色鮮やかなテクニカラーが大変な話題になったという。当時としては、これだけの色彩映画は無かった。ソビエト映画の「石の花」が既に3年前に公開されて評判を呼んだというが、こと色彩の美しさの点では遥かに「赤い靴」が優れている。この映画の見所が名手ジャック・カーディフ撮影の映像の美しさであり、それを最大限に表現したバレエ劇の舞台美術とその本格的なバレエ公演の見事さにある。
物語はバレエ団を舞台にしたバックステージもので、主人公のプリマドンナ、ヴィクトリアが恋愛とバレエの板挟みに会い、最終的には悲劇に終わる。このストーリーには、二人の男のエゴによりヴィクトリア一人が追い詰められるという、女性蔑視の点が見受けられる。常々イギリス映画を観て思うのは、紳士の国と言いながら女性に冷たい男が登場することだった。フランス、イタリアのラテン系と比較して、このアングロサクソン系はやはり違う。男が威張っているだけなのかも知れないが、女性に優しくない。この映画を観て、そんな思いを更に強めるくらいヴィクトリアの立場に同情してしまう。そこを含めて、このイギリス映画を観ると面白いと思う。
バレエ映画では、アメリカ映画の「巴里のアメリカ人」があり、この映画と双璧を成す。バレエダンサーを主人公にした名作では、ヴァネッサ・レッドグレイヴ主演の「裸足のイサドラ」があり、バレエの素晴らしさを映画で楽しめる三作品だと思う。
(1978年 4月22日 中野武蔵野館)
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