劇場公開日 2012年6月9日

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「もがき続けて波を待て」ソウル・サーファー 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0もがき続けて波を待て

2012年6月10日
フィーチャーフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

幸せ

片腕を失った実在のサーファー、ベサニー・ハミルトンの再生を描いた物語。

サーフィンの知識はサッパリな僕だが、劇中で見られる波の上での鋭い動きや
波のチューブを潜り抜ける動きはどー見たって素人技じゃない訳で、
サファイアのように美しい海中からの映像なども相俟って素直にスゴイと感じた。
映画の最後に流れる実際のベサニーを見れば、映画内での華麗な動きが全然誇張でない事も分かる。
「何だって出来る」という劇中の台詞も、彼女が言うならあながち嘘じゃないかも。

主人公ベサニーをアナソフィア・ロブが熱演。
快活な表情の裏の、理不尽な運命に対する哀しみが伝わる。
誇張の無い、ナチュラルで良い演技でした。
周りの役者陣も良い!
母親役のヘレン・ハント。
娘を傷付けないよう、娘の前では絶対に動揺を見せず、絶対に泣かない。
なんて芯の強くて愛情深い母親。
そして父親役のデニス・クエイド。
終盤、またサーフィンをしたいと娘から相談された時のあの表情!
喜びを押し隠して必死に冷静を装うような顔が素敵だった。
ベサニーの不屈の魂は間違いなく彼らの愛情に育まれたもの。
周囲も含め、良い人達に恵まれたね。

また、彼女の信仰も物語の重要な要素だった。
僕自身は神なんてものは信じてないが、
海というものは“それ”に限り無く近い存在かも知れない、と本作を観て思った。
今の日本人なら誰もが知る通り、海は決して慈悲深い存在などではない。
海はただそこにあって、僕らに与え続け、僕らから奪い続けるだけだ。
感謝の言葉にも憎しみの言葉にも応えはしない。人を愛しも憎みもせず、ただ、そこにある。
だから、理不尽な海に呪いの言葉を吐き続けた所でどうしようもないのかも知れない。
人に出来るのは、波間でもがいてもがいて、次の良い波が来るのをじっと待つ事だけ。
“もがき方”を教えてくれるベサニーのような人に感謝し、
一緒に波を待つ人達と手を取り合うだけだ。
もう二度とお互いが溺れてしまわない事を願いながら。

だが、
メッセージを強く打ち出し過ぎてややカタい映画になってしまった印象もある。
それと伝道師サラさん。
『重要な役なのになぁんか浮いてるなぁこの人』と思ってたが、
Churaさんのレビューを読んで納得。確かに歌唱シーンはあるが、別にそこ本業の人じゃなくても(笑)。

以上!
ポジティブな気持ちになれる、素直に良い映画でした。是非。

<2012/6/9鑑賞>

浮遊きびなご