机のなかみのレビュー・感想・評価
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𠮷田恵輔、驚異の長編デビュー作
いい加減で下心しかない家庭教師と、その教え子の女子高生の、ふたつの視点から描かれるどうしようもない恋の話。𠮷田恵輔監督が、前半と後半でまったく違うスタイルを使い分け、居心地の悪いブラックコメディからとんでもなくエモい青春映画へと鮮やかに変貌する。長編デビュー作にして非常にトリッキーな構成を苦もなく成功させていることに、何度観ても驚かされる。
バカバカしくて、情けなくて、品がなくて猥雑で、意地悪だけど、なんだかかけがえのないものを描いていて感動してしまう、という、いうなれば𠮷田恵輔的なものがこの時点でほぼ完成している大傑作。あべこうじと踊子ありが演じる家庭教師と同棲相手のしみったれた四畳半恋愛のリアリティも凄まじい。これより前の『なま夏』や『メリちん』からの飛躍の大きさを考えても、突如天才が降りてきたような凄味がある。
【嫉み、妬み、優しさ、良い恰好をしたいという人間の本能をエロティシズムとコミカル要素を塗して描いた作品。𠮷田恵輔監督の変わらぬオリジナル脚本のレベルの高さに驚いた作品でもある。】
◆感想<Caution! 内容に触れています。>
・家庭教師、馬場(あべこうじ)と、大学受験を控えた可愛らしい女子高生、望(鈴木美生)の二人の視点により、勝手に女子高生に好かれていると勘違いし、舞い上がる男の滑稽さと、恋する女の子の一途さを並行して味わえる作品である。
この作品の高校生達を含めた登場人物たちの、嫉み、妬み、優しさ、良い恰好をしたいという人間の本能を絡ませつつ、二つの恋が交わる予測不能な展開が、面白い。
・高校生の娘と風呂に入るお父さん(内藤トモヤ)の過保護過ぎる姿や、吉田監督作品には、欠かせないワンポイント俳優である、三島ゆたかもしっかりと、出演しており𠮷田ワールド形成に寄与している。
<長編デビュー作にて、このオリジナル脚本のレベルの高さ。
𠮷田恵輔監督の、今作後の邦画界での活躍が納得出来る作品である。>
気持ち悪いけどなんだか笑えるブラックコメディ
間もなく吉田恵輔監督の新作映画『神は見返りを求める』が公開される2022年6月、監督の長編デビュー作である本作をアマゾンプライムにて鑑賞しました。事前知識は全くない状態での鑑賞です。
結論ですが、気持ち悪いけど面白い!!
監督の作品は『ヒメアノ~ル』『空白』に続く三作目の鑑賞ですが、全てに共通してどことなく暗い雰囲気があったり、共感したくないけど共感してしまう登場人物描写が上手いですよね。本作はジャンルとしてはコメディ映画で笑えるシーンも多くあるんですが、その反面、全体的に暗い画作りや生々しい人物描写がちょっと怖い作品でもあります。
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家庭教師をしていた馬場(あべこうじ)は、大学受験を控えた女子高生の望(鈴木美生)の指導をすることになる。馬場は同棲している恋人がいるにも関わらず、美しい彼女に少しずつ魅かれていった。彼女を好きになっていく感情を教え子には手を出してはいけないという理性で抑えながら葛藤している馬場だったが、望の言動から「もしかしたら彼女も自分のことを好きなのかもしれない」と感じるようになり……。
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なんか雰囲気がポン・ジュノ監督の長編デビュー作『吠える犬は噛まない』に似ているような感じがしました。全体的にはコメディで笑えるんだけど暗い雰囲気があって、観終わってから「何なんだこれは」って思っちゃう感じ。多分本作が気に入った方は『吠える犬は噛まない』も楽しめると思いますよ。オススメです。
『ヒメアノ~ル』を鑑賞していた時も感じましたが、吉田監督の作品は一見明るい場面なのに薄っすらと暗い雰囲気が感じ取れるような演出がめちゃくちゃ上手いんですよね。前半は明るい中にも闇が見え隠れし、その闇が後半で一気に加速していく展開。本当にお見事。
本作の前半は家庭教師の馬場が同棲中の彼女がいるにも関わらず、教え子の望に惹かれていく展開。ここのあべこうじさんの演技はコントを観ているかのような面白さがあって面白かったですね。思わせぶりな言動をする望に年上なのにドギマギさせられてしまう馬場に、笑いのツボを刺激されます。当時売れっ子お笑い芸人だったあべこうじさんですが、実は芸人になる前に役者として活動していた時期もあるそうで、演技力は素晴らしかったです。
俳優陣の演技力・畳みかけるような巧みなストーリー構成・コメディなのに闇を感じる演出などなど、素晴らしい点がある一方、正直今まで鑑賞した吉田監督作品と比べるとどうしても一段落ちるような印象ですね。これは単純に私個人の好みの問題になるんですが。
結構ダレるシーンが多いのも気になりました。例えばバスの中で望が友人の多恵と話すシーン。多恵が延々とS〇XS〇X喋っているシーンが長回しで流されます。正直笑えないし、テンポが悪く感じます。他の映画でもたまにこういう会話の間で笑わせるシーンがありますが、本当に面白いのはほんの一部です。
まぁ、上記のような若干の不満点はありつつも、全体的に見れば楽しんで鑑賞出来た作品だったと思います。
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