おじいさんと草原の小学校のレビュー・感想・評価
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【“力はペンにあり。”ケニアに実在した元民主主義的独立運動組織に属していた、84歳の小学生の物語。彼の過去の独立を求める中で英国兵から受けた仕打ちを挟みつつ、学ぶ事、諦めない事の大切さを描いた作品。】
■2003年のケニア。
英国から独立後39年を経て、無償教育制度が開始される。
田舎の小学校に多数の子どもたちが集まってくるが、その中に1人、84歳になるマルゲの姿があった。
何度入学を断られても諦めないマルゲの熱意に打たれた女性校長のジェーン(ナオミ・ハリス)は、入学を認めるが脅迫、中傷の電話が掛かって来るようになる。
そして、ジェーンは上司のマルゲを辞めさせろ!という圧力に反発するが、遠い土地への転勤を命じられてしまう。
◆感想
・マルゲの何事にも諦めない姿が心に響く作品である。
ー 彼は若い頃から英国領だった、ケニア独立の為に民主主義的独立運動組織マウマウ団に所属していたが、妻や子を失っていた事が物語の随所で挟み込まれる。その事を思い出し、一人目を潤ますマルゲの表情。-
・入学を許されたマルゲは凄い勢いで文字の読み書きを習得していく。
ー そして、彼はジェーンを助ける立場になり、読み書きの覚えが遅いカマウに、優しく5の書き方を教えるシーン等、彼の人柄を表している。-
・ジェーンの家に脅迫、中傷の電話が掛かって来るシーン。
ー 彼女の夫は理解ある男だが、何度も掛かって来る電話に疑心暗鬼になるが、ジェーンは毅然として、”圧力には屈しない”と言うのである。-
・ジェーンが転勤する事を知ったマルゲは単身、ナイロビの教育委員会に乗り込み、要職者たちの前で、英国兵に拷問の際に付けられた背中の傷を見せる。
そして、彼は言うのである。
”良い教師を。子供は将来の繁栄を齎す。”
・彼の進言により、ジェーンが戻って来るシーンも心に響く。
<今作は、一人のケニア独立の為に命懸けで戦った男が、学びの大切さや諦めない事の大切さを自ら示した事を描いたヒューマン映画である。
画面では描かれないが、彼はアメリカに行き、国連でスピーチした事もテロップで記される。凄い男が居たモノである。>
大人が見たほうが響くかも
文科省推薦になりそうな作品。
海外への経済援助で「日本人はなぜ学校ばかり作るのか」と言われるそうだが
その理由はここに集結している。
文盲のおじいさんが手紙を読めるようになりたい、それだけの映画と思いきや、
おじいさんはケニアの独立運動にも絡んでいて、
複雑に部族間の反感も現在まで続いていることがわかる。
しかしケニアの未来を担う子供たちは部族間で争っていてはいけない。
大人たちの黒い歴史を背負わせないためにも
子供たちへの教育は必要なのだ。
卑怯な父の姿を見て息子はいったいどう感じただろう。
一方マルゲは誇り高い戦士であった反面、
他人をなかなか心から信用できない頑ななところがあった。
それが「なにがなんでも自分で手紙を読まねばならない」といった考えに顕れている。
そんな彼が、手紙を読んでくれと頼む。
小学校に通ったことで、
マルゲの中で氷解ともいえる人間的成長があったことを示す
いい場面だったと感じた。
手紙の内容はそれまで語られた過去が
さらに想像を絶する長い苦痛であったと知れる悲しいものだったが。
重い過去がありながらも、
作中の人物達、マルゲも教師も子供たちも表情は明るい。
教育によって可能性の扉が多く開かれた、
未来へ向かっている眼差しには観ていて深い感動を覚えた。
最年長小学生の壮絶な人生
キマニ・マルゲ84才の小学生で最年長ギネス認定、男性の平均寿命が59才(2014年統計)と言うケニアでは稀なご長寿なのでしょう(2009年、90才胃癌で死亡)。
映画はいわばドキュメンタリーを役者が演じているとした方が分かり易いでしょう。ジェーン先生のナオミ・ハリスは英国の女優さんですがマルゲを演じたオリバー・リトンドはケニア生まれで元BBCの特派員でしたからマルゲへの思い入れもひとしおだったでしょう。
人格の礎となる初等教育の重要性は言うまでもないのですが英国統治時代の圧政に加え部族抗争の絶えないお国柄ではその役割は極めて大きいでしょう。
実話と言うことで感慨深いがマルゲは30人の孫がおり、その内の二人と学校に通ったと言う記事(ウィキペディア)を見た、映画では妻子は英国の入植者に殺されているので意外であった。
映画では読み書きの動機は手紙にあったようだが、彼は聖書を読みたかったという説もあり、90才でカトリックの洗礼を受けStephenというクリスチャンネームを得ています。壮絶な人生、不屈の人柄に圧倒されました、最後の子供たちとの輝かしい学校生活は神様からのご褒美にも思えます。いわば英国の暗黒史を英国が映画化したということも意味深いですね。
世の中知らないことだらけ
ケニアでこんなことがあったこと自体知らず、驚きです。
世に知られていないだけで、英雄と呼ぶに値する人は沢山いるんだろうなあ。
高齢であることもものともせず、手紙を読むために、(あるいはプライド、何かをやり遂げるという気持ち?)小学校に入ろうとする爺さんのモチベーションすごい。
実際の彼のこの行動は、多くの人に学業の大切さを気づかせたとのことで、影響力はすごかったようです。
そんな爺さんを受け入れてくれる校長先生。
爺さんの熱意に突き動かされて、嫌がらせにも負けずに「屈しない」という意思を貫き通す強さに感服です。
爺さんも先生も、しかし服のセンスがまたいいですね。
人間自体に味があるので、素朴な服でも素敵です。
あと教育省?かなんかのビルがとてつもなく良い。
子供がしかし元気だ!
休み時間のお遊戯を見るだけで、身体能力とリズム感がアジア人のそれとは全く別物だということがわかりますw
期待していなかったが…
英国による植民地支配の時代背景を随所にフラッシュバックさせる手法でストーリー展開されるわけだが、そこには邦題とは似つかわしくない悲惨な現実もたちあらわれている。
どっちかというと、ほのぼのとした空気感で押し切ってもらっても良かったのだが、手紙の朗読場面での感動は現実を描いてこそ。
先生を取り戻す、というくだりは今時わかりやす過ぎる展開だが、ややこしくされるより楽しめるのでいいと思う。
識字率の高い教育制度の整った我が国は世界的にも幸運な国だ!
1964年にイギリスの植民地支配から独立したケニアに於いては、首都のナイロビ以外の地方の地域などでは、教育を受ける機会に恵まれる事が今世紀に入っても困難な状況下にあると言う。その事実に基づいて、本作品は、高原地帯のある村で、2003年に現実に起きた物語をイギリス映画が制作して出来た作品である。
2003年になり、ケニア政府は、ようやっと無償教育制度を導入し始めた。そこである村に小学校が開校する事となり、無償で教育を受けられると言う事で、当時84歳になるマルゲと言う老人が入学の申し込みやって来るのだが、当然1人でも多くの未来有る子供達に教育の機会を提供する為に出来た、この新しい教育制度に、84歳の老人の入学は初め拒否されるのだが、片道数時間かけて歩いて通って来るこの老人の熱意に心を動かされた、校長先生である、ジェーンは入学を許可するのだが、この事に反対する勢力もあり、対立が生れるのだが、最後は、雨降って地固まると言う事で一件落着するのだが、最初はマルゲを拒否していた教育機関も最後は逆に、彼の事を教育のキャンペーンのプロパガンダにしてしまうと言う有り様だ。
何処も同じと、クスット観ていて思わず笑いが出ましたが、まあ最後は一応ハッピーエンドとなって、これが実話だと言う事で一安心したけれど、この映画を観ていると、本当に日本に生れ育った事を幸せだと思わずにはいられない!
明治時代から、日本では義務教育制度が出来ていたのだし、その前の江戸時代でも、かわら版を読む町人がいると言う事は、武士だけでは無く、読み書き、ソロバンと言って、日本では、教育に於いては非常に熱心に取り組んで来た国の歴史が有ると言う事は何より幸運な事だとこの事実を知ると思った。
映画はドキュメンタリータッチで淡々と84歳のマルゲお爺さんの日常生活と学校生活と、そして彼が生きて来た辛く長い道のりも淡々と描かれ、マルゲの勉強をひたすら後押しし、抵抗勢力の邪魔にも、屈せず教育者として熱意を持って頑張るジェーンの姿も素晴らしいのだが、それに対して、少しばかり、ジェーンの夫は情けない奴だ。
自然の美しさと、教育の真髄と、自分の希望や、理想に向かい決して諦めずに前進して行く人間の逞しさ、素晴らしさに胸が思わず高鳴ります!
シンプルで、これと言って派手なところも有りませんが、この作品は、アフリカの現実を知ると言う意味に於いても、是非時間の有る方は、観て損する事の無い作品です!
我が国や、欧米先進諸国では、景気の長い低迷から、就職難民が多数いる事から、昨今では、大学卒は当たり前なので、大学院卒も決して珍しくは無い時代になってきているのだが、それでも「大学院は出てみたけれど・・・?」と言う今の時代何とかならないものでしょうかね?
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