リミットレス : 映画評論・批評
2011年9月27日更新
2011年10月1日よりTOHOシネマズ六本木ヒルズほかにてロードショー
絶妙なリアリティとスピード感で一気に見せきるサスペンススリラー
麻痺した身体機能が脳トレーニングで回復できるようになり、アルツハイマーの治療薬も現実に近づいた。人間の脳能力を模倣したチップ開発も成功。医療界でもIT界でも<脳の開発>がこれだけ進んでいるのだから、脳を100%活性化して潜在能力を引き出す新薬だって、どこかで極秘に作られているかもしれない。そう思いたくなる絶妙なリアリティがこの映画の面白さのベースだ。
薬で覚醒した主人公エディ(ブラッドリー・クーパー)が、まずゴミ溜めのような部屋を片づけ、身なりを整えることから変化を始めるのも、SF的サクセスストーリーに日常のリアリティを与える効果がある。聞いただけで外国語がペラペラになるのはご愛敬としても、頭の中で渦を巻いていた言葉がスラスラと文章になり、知識の断片が体系的につながって価値ある情報に変わることは誰にでも起こりうること。酷使しすぎた脳が悲鳴をあげて命に危険をもたらすリスクだって当然あるだろう。
そんな、生と死が紙一重の薬を上手く利用してサスペンスを構築したテクニックはなかなか。スピード感150%のカメラワークと編集でドラマに引きずり込むパワーも抜群だ。自分はリスクを冒さずに、薬を与えた人間をコントロールしようとするフィクサー役がもっと描き込まれていれば完璧だった。そこを膨らませて、世界中の重要人物はみんなこの薬が作りだしたという大型SFホラーにする手もあったかもしれない。
(森山京子)