「何故このラスト?」宇宙兄弟 tochiroさんの映画レビュー(感想・評価)
何故このラスト?
原作の漫画がまだ連載中の作品を映画化するのは難しいものだ。どこまでの内容にするか(どこで切るか)によって作品の印象は変わってしまうし、原作ファンは自分の好きな部分が改変されたり削られたりしたら、文句を言うだろうから。
自分も原作ファンとして「映画と原作とは別物」と覚悟しながら、どんな作品になっているのか、期待と不安半々で劇場に足を運んだ。中盤過ぎまでは結構原作のニュアンスを生かした展開と、充実したSFX(VFX)に「これはなかなか面白いかも」と思いながら観ていたが、その期待は終盤に至って悪い意味で裏切られてしまった。
月面で遭難したヒビトが地球光に勇気づけられたとはいえ、単独で「奇跡の生還」を果たしたかと思えば、5年後の世界でムッタは無事宇宙飛行士になり、ヒビトと一緒に月に行くという何とも駆け足の展開。おまけに蛇足としか言いようのない無意味なUFOの再登場等々。ここまで強引なハッピーエンドにする必要があったのだろうか。
原作にあった様々な人との関わりや、宇宙飛行士としての訓練の描写がここまで無視されるとさすがに悲しい。これでは続編も作れないだろう(もし無理に作るとすればムッタが火星に行く話か)。
個人的にはヒビトが色々なサポートに助けられて無事生還を果たし、ムッタが宇宙飛行士としての訓練を開始するためにNASAに行くところで終わってもよかったと思うのだが、所詮は勝手な思い込みに過ぎない。
それと伊藤せりか役の麻生久美子はミスキャストのように思う(麻生久美子ファンの皆様ごめんなさい)。あまり宇宙好きの雰囲気が伝わってこないし、もう少し設定年齢に近い女優の方が紅一点としての魅力が出たのではないだろうか。