劇場公開日 2012年5月5日

宇宙兄弟 : インタビュー

2012年4月30日更新
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弟・ヒビト役は岡田将生。2007年のドラマ「花ざかりの君たちへ イケメン♂パラダイス」などで共演しており、気心は知れている。年も7歳差と兄弟を演じるうえではピッタリだ。

「岡田くんがもともと好いてくれていて、先輩後輩みたいな関係性はありました。彼は姉と妹の間で育ってきた子なので、男兄弟の感覚が分からないからなるべく僕と一緒にいるようにしますと言って、時間があればウチに遊びに来て酒を飲みながら、そのまま僕のベッドの横で寝ていくこともあったんです。そのことを監督に話したら、『男兄弟ってそういうことじゃない。履き違えているな』ということにもなりましたけれど(笑)。でも、その無邪気さが、ヒビトのキャラクターにリンクするところがありましたね」

だが、既に宇宙飛行士になって搭乗間近のヒビトと、日本でくすぶっているムッタの共演シーンは意外に少ない。特に宇宙航空研究開発機構(JAXA)を舞台にした選抜試験は、閉鎖環境ボックスでの訓練など文字通り閉鎖された空間での撮影が続く。さぞ、過酷だったのではと思ったが、5人の男が一軒の家で自殺したアイドル追悼のオフ会を開く07年のワンシチュエーション・コメディ「キサラギ」の経験が功を奏した。

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「ずーっと同じ場所で1カ月弱生活すると、完全な密室ではないにもかかわらず変なテンションになっていったんです。途中からは本当に男子校みたいになっちゃって、朝から下ネタばかり話しているみたいな。女性スタッフに聞かれても誰も気にしなくなっていく人の慣れや、もう何でも見せてしまえという状況になっていく環境は面白いなと思っていたので、常に人に見られながらすごく狭い世界にいると、徐々にバランスがおかしくなっていく感覚は分かっていました」

それ以上につらかったのは、ムッタが再就職するための面接シーン。40分間の長回しで段取りは一切なく、面接官も俳優なのか一般人なのかも知らされていない状況。アドリブでムーンウオークまで披露する。

「何も決まっていない中で(撮影の)前日に南波六太の履歴書を書けと言われ、誰なのか分からない面接官とただひたすら話をする。俳優なのかどういう人なのかも分からない人が目の前にいて、専門的なことを聞かれたらどう返すべきなんだろうとか。監督からは、本当に分からなかったら沈黙でかまわない、40分間で南波六太を探してほしいと言われた中でやっていましたけれど、(クランクインして)2日目くらいだったので、あれはつらかった……」

NASA(米航空宇宙局)のケネディ宇宙センターなどでもロケを行い、ヒビトが乗るスペースシャトルの打ち上げシーンではアポロ11号の乗組員として人類で初めて月に降り立ったバズ・オルドリンとも共演。約2カ月に及ぶ撮影は迷いとの闘いだったが、完成した作品に対しては「1人の観客として」と前置きした上で「すっげえ、面白かったです」と相好を崩す。

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「自分の中ではムッタのキャラクターに対して、最後の最後まで『よし、これだ』というものが分からないまま演じていたところがあったので、(撮影が)終わったときはフーーーーッ(と深いため息)という感じでした。1回、CGが入っていないものを見せてもらい、そのときは自分のことばかり気になっちゃったけれど、そういうことを全部抜きにして1人のお客さんとしてあらためて見たらすごくいい映画でした。大作で、しかもCGを使って宇宙に行くスケールの大きいことをやっている。すごく未来の夢が見られる映画だなあと感じました」

今年に入り、「踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望」と初の海外作品となる中国映画「楊貴妃」の撮影が同時進行するなど、20代のラストイヤーも疾走を続けている。だが、その10年間を「青年と大人の間にいるような感じ」と振り返る。そして、先ごろ結婚した自覚もあるのだろう。30歳を“真の成人式”ととらえ、頼もしい言葉で締めくくった。

「僕らの世代って、昔に比べてだんだん幼稚化していると思うんです。30歳なのにすごく若く見られるような。昔はそれこそ元服が14歳くらいで、それが20歳になった。今は30歳があらためて、ちゃんとした大人として社会と向き合う年齢だという気がする。今後は、俳優だからとにかく面白いものが作れればと思うこと以上に、社会というものを目の前に置いたとき俳優として何をすべきなのかを考えられるようになったらいいのかなあ」

照れ笑いを浮かべながら「漠然とですけれどね」と謙そんしながらも、頼もしい限り。本人の言う成人を迎えた時の小栗旬は、ひと回りもふた回りも大きくなっているはずだ。

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