「報復と赦し」未来を生きる君たちへ kakerikoさんの映画レビュー(感想・評価)
報復と赦し
アフリカ難民キャンプとデンマークのそれぞれを舞台に、違う世界観の中に垣間見る暴力の存在、それを深い人間像を描き出す中で問題提起してくれるような秀作の一本です。
[暴力の本質は連鎖。振るう方にも痛みはないのか、その痛みは心の痛みでもあるはず] と、以前、違う作品のレビューでも書いたのを覚えています。些細のない口喧嘩でさえ、きっかけはあるし、そのきっかけとは関係ないところで、自身の置かれた環境が心を荒んだものにしてしまうこともあります。
複雑に絡み合っている大人の事情や環境の中で、親は子に重要なことを伝えたいのですが、それが「きれいごと」だとも分かっています。でも、暴力には暴力で!を実行している限り、いつまでもその連鎖は断ち切れないのも知っています。とても難しいことですが、個人レベルならば、(親が、友が、師が、誰かが)包み込んで傷ついた人の心を溶かす機会を与えなければならないのです。温かい一杯のスープを差し出す勇気があればのこと。
この世界は決して生き易くないかもしれません。映像に映し出された、まるでドキュメンタリーの一コマかと思うような冒頭のシーン。「How are you?」と大合唱しながら、南アフリカの子供たちが医療チームのトラックをどこまでも追いかけます。
彼らの笑顔を、今を生きる大人たちが守ってあげなければ、少なくとも、毎朝、目を覚ましてから、その日一日を生きることが苦痛に思えるような子どもを作ってはいけないのだと、ふと、そんなことに思い至った作品でした。 (4.8点)
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