サラの鍵のレビュー・感想・評価
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人探しの旅
言葉が出ません
サラの過酷な人生。ジュリアの想い。息子ウィリアムやサラの夫、農夫のジュールスの複雑な胸中。全てはラストシーンで昇華された気がしました。息子ウィリアムがサラがユダヤ人であることを受け入れられなかったのは、自分とは無関係だと思っていたユダヤ人が実は自分事だったということを受け入れられなかったからでしょうか。ヴェルディヴ事件、恥ずかしながら全く知りませんでした。たった83年前の出来事。もしその現場に自分がいたらどうできたのだろう?全く知らなかったんですと言っている今の自分のように知らんふりを決め込むのだろうか。知らなかったのではなく知ろうとしなかったのかな。ジュリアの夫や家族のように。認識しなければ存在しないという立ち位置の人とそうでない人がいて、ジュリアは後者で自分もそうありたいです。今も世界では戦争が起きている。どうすべきなのでしょうか。
寝た子を起こすな。
その鍵は哀しみの歴史の扉を開く鍵なのか、あるいは新たなる未来の扉を開く鍵となるのか。
戦争体験者の多くは自身のつらい体験を語らずにこの世を去る。あまりにつらい体験なためそれを記憶の奥底に沈めてけして浮かび上がらせないよう口を閉ざすのだという。
幼いサラは弟を守るためにクローゼットに隠した。しかしそれが仇となり弟を死なせてしまう。彼女は自分の体験をだれにも話さずにこの世を去ってしまう。
幼き頃のあまりにつらく悲しい体験。たとえ結婚をして子供をもうけても結局彼女は幸せになれなかった。あまりにもそのつらい記憶が彼女の心を蝕んでいた。
記者のジュリアは夫の実家がユダヤ人から接収された物件であったことから、その部屋に住んでいたユダヤ人家族について調べ始める。
なぜ過去のフランスが犯した罪をあえて掘り起こそうとするのか、寝た子を起こす様なものだと夫や周りから責められる。
誰でも自分の暗い過去を掘り起こされるのは嫌なものだ。特に自分が加害的な役割を果たしたような過去については。
しかしそれでもジュリアは調べようとする。まるで自ら進んで重荷を背負うかのように。それは彼女があえて高齢出産に挑むのと同じだった。高齢での出産育児はとてもリスキーだと夫からの賛同は得られない、それでも彼女は出産を選択する。
たとえ今は重荷を背負うことであっても、それは必ず未来へつながることだと信じているからだ。
過去を掘り起こしその過去の過ちと向き合うことも未来へとつながることだ。過去に目を背ければ同じ過ちを犯すことになり、新たな未来はけして開かれない。彼女がその鍵で開こうとしたのは新たな未来への扉だった。
そしてジュリアは生まれた娘の名前をサラと名付けた。不幸な時代に生まれたかつてのサラに深く刻み込まれた心の傷は彼女を死へと追いやってしまった。あまりにも不幸な人生。せめてジュリアはサラの生まれ変わりとして今度こそ幸せになってほしいとその名を娘につけたのだろう。
ジュリアが娘の名はサラだと彼女の息子に告げるラストシーンで涙を禁じえなかった。
サラを助けた夫婦
咄嗟に機転を効かせて弟を隠した、までは良かったが…せめて鍵を掛けなければ。
最後まで弟救出を諦めなかったサラ。
収容所から脱出を助けた憲兵?
あんなこともあったのかな…。
怖そうなおじさんだったが、サラを助けた夫婦がとても良い人達だった。
愛情深くサラを見つめるおじさん。
黙って出て行った彼女を責めもせず。
せめて死ぬまで忘れないでいてくれたと信じたい。
フランスでもこんなことがあったとは。
サラが鍵をかけたものは
ホロコースト関連の映画は沢山あるが近年は少々変化球気味の作品も増えた。本作もまた、そんな変化球作品だ。
ストーリーはサラを中心とした過去パートとジュリアを中心とした現代パートで構成される。
過去と現代を交互に描きながら焦点が、連行されるサラとサラの両親、納戸に閉じ込められた弟、ジュリアの妊娠、サラのその後、と変化していき、その都度面白いのだが、全体のまとまりは少々薄い。
特に軸となる最終的なメッセージがあやふやで、とらえたいように解釈できる良さはあるけれど、ただ事実だけを伝える主張のないニュース映像を観たような印象だ。
とりあえず、過去と現代があまり繋がらないことに大きな問題を感じる。
それでも、サラというキャラクターだけを見た場合、非常に興味深いものもある。
時代のうねりに飲み込まれ彼女の身近にいくつかの死があり、それはサラの非力さのせいなのかもしれないが、少なくとも彼女の過ちのせいではない。
当然、サラを責めるものはいないが、サラ本人にとってはどうだ?。あの時ああしていればあの人は死ななかった。こうしていれば死ななかったかもしれない。と、後悔を募らせる。
その後悔は次第に罪の意識として蓄積していき、サラの心を蝕んでいく。
そして、ユダヤ人であるために自らが受けた恐怖と合わさり、どれほどサラに見えない重圧としてのしかかっただろうか。
過去の出来事に対して乗り越えるべきなのかフタをするべきなのか私にはわからないが、作中で二度ほど、過去をほじくり返すな、というようなセリフが出てくるし、サラは自分の心に鍵をかけた。
少なくともフタをするかどうかの判断は本人に委ねられるべきで、他者が安易に触れていいものではないと、善意を装った第二の迫害はあるのではないかと言っているように思えた。
しかし、残された鍵で自らの扉を開けることは自由だ。
ナチス·ドイツ占領下のフランス 1942年7月16,17日に行われ...
ナチス·ドイツ占領下のフランス
1942年7月16,17日に行われた
フランス警察によるユダヤ人一斉検挙
ヴェロドローム·ディヴェール(ヴェルディヴ)事件
10歳の少女サラ・スタルジンスキは
弟のミシェルを納戸に隠し鍵をかけた🗝
2009年
パリでフランシスの夫と娘と暮らす
アメリカ人ジャーナリスト ジュリアは
ヴェルディヴの記事を書くになる
取材してるうち
義親から譲り受けた家は
かつてサラが住んでいたことを知る
1942年と2009年
サラの足跡を辿り
サラの家族、ジュリアの家族
過去と現在を交互に描かれながら
交差する家族との関わりをひもとく
.
「現代の視線では、今を生きている私たちがホロコーストについて考え、そして昔を知ることが重要です。過去の視線では、急いで生きている現代人に対して、過去のことは将来に何らかの影響を与えるのだ、どんな些細なことでも未来の世界に通じている。 ───ジル·パケ=ブランネール監督」
「真実が知りたかった」
「真実を知るには代償が伴う」
「他人の人生に干渉し、過去を掘り返し、批判する。私は何様?何て自分は傲慢なのか…」
ジャーナリストのジュリアの言葉
知らなくてもいい事もあるけど
知って救われた人々がいる
過酷で辛く悲しいお話だけど
人の優しさと温もりも感じられる作品
1942年7月におきたこの事実
81年後に初めて知りました
理解には程遠いけど
でもまずは事実を知ること
1995年フランス政府(シラク大統領)は
事件への責任を認めた
2007年に発表された
タチアナ·ド·ロネの同名小説を映画化
ジュリアの娘のサラが生きる時代は平和であって欲しいと願わずには…
少し前、ナチス関連の映画を紹介する本で、
この作品のことを知ったが、
キネマ旬報で第38位との評価には
納得出来ない素晴らしい感動作だった。
中盤まで、なかなかそれぞれの登場人物の
関係が分からず、理解に苦労したが、
徐々に「ソフィーの選択」に似た匂いが
感じられてきて、
弟を死に至らせた十字架を背負い続けた
女性と、
彼女に関わりのあった沢山の人々の人生模様
が見えてきた。
中盤以降は、彼女の周辺に登場してくる
心優しい人々に護られながらも、
トラウマに支配され続けたサラの人生を
推理劇のように徐々に解き明かす演出に
引き込まれると共に、
その影響を受けたジュリアが、
夫に反対されながらも出産を決意する心の
変遷にも感動を覚えた。
そして、出産後のジュリアが
「娘の名前はサラ」と、
サラの息子に告げた場面では
涙をこらえられなかっただけにとどまらず、
このシーンを思い出して
こうして投稿文を書いているだけでも
更なる涙が溢れてきた。
窓の外を見つめる娘の
後ろ姿のラストシーンに、
ジュリアの娘のサラが生きる時代は
平和であって欲しいと
願わずにはいられなかった。
4/19・24と2度の再鑑賞。
それまで、同じ作品を二日連続で
劇場鑑賞したことはあったが、
ビデオレンタル期間内とはいえ、
1週間で同じ作品を3度観たのは初めて。
そして、その度に号泣してしまった。
ジュリアの出産への思索の変遷には
やや不充分さを感じるものの、
“全ての希望は真実の上にあるべき”との
テーマ性が私の心をわしづかみする
見事な演出には、
評価を満点するしかないと
🌟5つに変更させて頂きました。
心は張り裂けた
自身を責め続けたサラ
ヴェルディヴ事件について調査を始めたジャーナリストのジュリア( クリスティン・スコット・トーマス )が、少女サラ( メリュシーヌ・マイヤンス )とその家族の存在を知り、消息を辿るが…。
パリでもこのように残酷な事が行われていたとは。
サラが思わず悲鳴を上げるシーンが痛ましい。
弟を助ける為に必死で生き延びたサラでしたが、自分だけが幸せな人生を送っている事に耐えられなかったのかも知れません。
-事実を知るには代償が要る
BS松竹東急を録画にて鑑賞 (字幕版)
永久保存版🙆♂️
かなり前に
過去と現代が交互に描かれる。
1942年の7月、パリに住むユダヤ人の家族スタルジンスキは、ヴェロドローム・ディヴェール(ヴェルディヴ、屋内競輪場)一斉検挙の朝、パリ警察に逮捕されるが、サラが気を利かせ弟をクローゼットに隠してしまう。しかし、収容所に入れられると弟が死んでしまうかもしれない・・・誰かに鍵を渡せられれば・・・臨時収容所に入れられ、家族3人がバラバラにさせられたスタルジンスンキ。サラは高熱を出し、3日間うなされていたが、介抱してくれた女の子と一緒に脱走を企てる。パリの警官も悪い人ばかりじゃない。ジャックという警官が鉄条網を開けてくれて、2人は逃げ出したのだ。どうなる?弟のミシェール。かなり時は経っている・・・
現代のジュリア。妊娠について悩みつつも、自分が住む予定となっているアパートにもユダヤ人がいたことがわかる。折しもヴェルディヴについて調べていたところだったので、その部屋にはサラたちスタルジンスキの家族が住んでいたことまで掴んでいたが、両親の死亡は確認されたのに、収容所での死亡者リストにサラとミシェルの姉弟の名前が見つからないのだ。しかし、義父テザックの話を聞いて氷解する。田舎のデュフォール夫妻の親切によってスタルジンスキのアパートに戻ったサラは、大切に持っていた鍵で納戸を開け、弟ミシェルの遺体を発見する・・・これが中盤。
それからはサラの消息を辿るジュリア。秘密主義となったサラはニューヨークへ渡り、幸せな結婚をしていた。早速生まれ故郷でもあるNYに飛んだジュリアは、サラが結婚した相手の家を捜し当てるが、サラは交通事故で60年代に亡くなっていて、再婚もしていた。忘れ形見である息子にもフィレンツェにまで会いに行く。
後半はサラの過去とその後を訪ね歩くといった内容。ホロコーストの悲惨な部分はほんの触り程度なのだが、それでも逃げ出すために病気を装うために口の中を切るアンナという女性の描写が印象的だ。
サラの息子が母親がユダヤ人であることさえ知らないこと。ようやく病床にあった父親が50歳を過ぎている彼にすべてを教えてくれるのだが、歴史を封印してはならないということを静かに訴えてくる。ヴェルディヴ事件という歴史。そして、家族の忘れ去りたい過去においても、世間に訴えるため明らかにすることも大切なのだ
観るのに覚悟が必要な、そして一度観たら忘れられない作品
何度思い返しても、小さな弟を納戸で発見した時のサラの気持ちを思うと胸が締め付けられる。
サラが小さな弟を納戸に隠した時の気持ち、強制連行された後に弟が心配でたまらない気持ち、そして納戸で変わり果てた姿の弟を発見した時の気持ち。
そして、待望の妊娠が分かると同時に、自分の義父が住んでいたアパートがサラの住んでいたアパートだと、サラが変わり果てた姿の弟を発見したアパートだと知った時のジュリアの気持ち。
それぞれの気持ちが痛いほど伝わってくる、というよりも襲ってくる映画。
自分がサラだったらと思うと、自分だけが幸せに生きていくなんて耐えられない。
そして自分がジュリアだったらと思うと、望んで望んで望んでやっと授かった我が子を中絶なんてできない、ましてやサラの人生を知ってしまった後で、自らが授かった新たな生命を絶つなんて出来るわけがない。
ジュリアが(ジャーナリスト魂からか)過去に起こった惨劇から目を背けることなく、事実が明らかになるまで調べ尽くし、それによってサラの息子にも事実が伝えられ反発されるが、最後にはその事実が受け入れられ、そしてジュリアが連れていた幼子の名前が”サラ”だと分かった瞬間、観ている私たちまで言葉を失う。
そしてそのサラが無邪気に遊んでいる姿に救われる。
観るのに覚悟が必要な、そして一度観たら忘れられない作品だと思う。
全38件中、1~20件目を表示













