「世田谷に生まれ育った」秒速5センチメートル(2007) 福山雅治さんの映画レビュー(感想・評価)
世田谷に生まれ育った
2007年当時から何度も見てます。
新海誠監督は、地方と東京を対比する描写が多いですが、長野県で青春時代を過ごした所以でしょう。長野県といえば、「白線流し」が有名ですが、素朴な日常を過ごしてみんな思い想いに上京します。
ちなみに秒速5センチメートルだけでなく、君の名はのみつはも大人になり、東京に上京します。
そして、東京のど迫力に嫉妬します。喪失感に苛まれることでしょう。
逆に世田谷から地方に引っ越すと、なにもないことに気付かされます。不便な土地、なにもない街、早く東京に戻りたい、でも戻れない不自由さを痛感します。
とはいっても貴樹の親はJAXAの研究者、一方であかりはそうでもない。
世田谷という地は、貸家も多く、高い家賃に耐えきれず地方に引っ越す人も多い。
小学校の半分以上は中学受験組で、公立に進学する者と私立に進学する者で二極化している地でもあります。
こどものときは仲よくても、だんだん大人になると格差を痛感せざるを得ない。こどものとき仲よかった友だちとは、教育環境の違いでだんだんと疎遠になります。
恋愛も同じ。生活レベルが異なる者同士では、恋愛感情だけではやっていけなくなるでしょう。
大人になった貴樹とあかりの距離が遠ざかっていく理由も心の距離だけでなく、ちがう教育環境で育った者同士がうまくやっていける確率は低いというかすかな予測にあるのかもしれません。
二人の距離さえ遠ざけてしまう、地方と東京の格差だけでなく、富む者と平民との教育格差が分断を生んでいることも孕んでいるのかもしれません。
それは地方で育った者が、東京の大学に進学して、貧富の差を痛感するドラマ「白線流し」にも共通するものがあります。
東京と地方の格差は秒速5センチメートルづつ広がっています
