「絶妙な余韻の残し方」秒速5センチメートル(2007) シェリーンさんの映画レビュー(感想・評価)
絶妙な余韻の残し方
新海監督の作品初鑑賞です。
君の名は。はまだ観ておらず、こちらの作品を先に観ました。
観終わった後の感想としては、切なくて胸が張り裂けそう。
でも、お互いに人生を踏み出している。
淡くて優しい恋の物語ですね
1話目は、貴樹が雪の中明里のもとへ向かうという状況でしたが、
雪と主人公の苦しい胸の内がいい情景描写として表現されているのが印象的でした。
家族は心配しないかなぁ、とも思いましたがそれほどは出てきませんでしたね。
途中、時刻表を買うときに種子島の本がちらっと写っていましたが、伏線だったのかと後で気づきました。
2話目では、主人公が引っ越しをした先から始まりますが、花苗の叶わない恋が描かれています。ジュースを買うコンビニがいい脇役だと感じました。最後は、貴樹と同じコーヒー牛乳を買う花苗の心理とはどのようなものか、考えてみたいです。
また、貴樹の宇宙に対する夢が明確に心理描写として描かれていますね。
3話目では社会の中で葛藤する社会人の貴樹が描かれています。山崎まさよしさんのソングが絶妙なタイミングでかかるのが素晴らしいと思いました。(歌も素晴らしいです)また、やはりここでも種子島の雑誌を手に取る貴樹の姿が見られます。
心の中に秘めてきた宇宙への夢をあきらめきれない貴樹の心理が3話分を通して描かれているのだと思います。
最期踏切の場面はすごく余韻のあるものでした。
明里と思われる人と踏切ですれ違う瞬間、そして振り返る瞬間、視聴者の目は電車の奥に釘付けです。
結果として彼女はその場にはいない、という結末でしたが、二人の脳内には幼い頃に駆け回ったあの想い出が蘇ったのではないでしょうか。
そして、貴樹は歩き出して終わります。
続いていくそれぞれの人生を、少しずつ伏線を残しながら(貴樹なら宇宙への大きな夢)終わるこの余韻の残し方が絶妙だと思いました。