「懐かしいな、と思える風景」秒速5センチメートル(2007) とばさんの映画レビュー(感想・評価)
懐かしいな、と思える風景
リアルな背景に、アニメ映画ではなく
人間が演じているドラマを見ている気分に。
でも、もしこの映画を人が演じていたらみなかったと思う
背景がリアルな反面、キャラクターがやけにアニメチックではじめは違和感を感じた
あそこまで写実的な背景をかけるんだったら人間ももっと手抜きしないでかけるはずだけど、
それをしないのはわざと?
第一章の主人公の語りがすごく鼻につきました…なんでだろう
調べてみたら新海監督は村上春樹もお好きらしく、
私は村上春樹の小説の主人公も、だから一体なんなんだって思ってしまうことが多いので、
この秒速の主人公にもそれと同じ感情を持ってしまったのかもしれません
いつまでも感傷的に昔の女性を引きづる描写に共感できなかったのは、語りが難しくて長かったからでしょうか
「幾ばくと」とか「横たわる」とかいう表現がきいててだめだった
もし、この映画のジャンルが「恋愛もの」だとしたら、まったく理解できないけど
主人公の成長や、思い出をテーマにしているものだったら、まだ理解できる…
室生犀星のふるさとのうたを思い出しました
桜の季節や雪の風景、電車の中からの景色など
見ている誰もがなんか懐かしいな、と思える風景をドンピシャで描けるのはすごい
一章は風景がすごくきれいなのに、三章はそこまで綺麗じゃないのも印象的
子供時代の思い出って美化されるし、過去の思い出はきれいっていうのを映像で表現できるのはおもしろい
小説版の秒速5センチメートルでの主人公の恋愛遍歴とかを調べたら調べるほど素直に感動できなくなっていくので、
映画ではじまり映画で終わったほうがこの作品は楽しめると思いました
新海監督の作品、ほしのこえや星を追うこどもとか、意外といろいろ見ていたことに気付いたけど、
どの映画もぼんやりとしたなんともいえない余韻が残る、不思議な作品です