「パンを2つに割って「はい(どうぞ)」」しあわせのパン shimoさんの映画レビュー(感想・評価)
パンを2つに割って「はい(どうぞ)」
映画「しあわせのパン」(三島有紀子監督)から。
私好みの、ほんわかムード満載の癒し映画だった。
作品の中で、何度も何度も登場する
「パンを2つに割って『はい(どうぞ)』」と渡すシーン。
気になっていたが、お互いの台詞としては、
何気なく「はい・・」と渡し「ありがとう」と言うだけ。
しかし、そのシーンこそ、しあわせのパンの食べ方だった。
パンは、どうやら「分け合いながら食べる」ものらしい。
その行動から「家族の原点」とも言える「仲間意識」が芽生え、
どんなことがあっても崩れない結束みたいなものが育つのだろう。
今回、素敵な台詞がいっぱいあったにも関わらず、何気なく、
「パンを2つに割って『はい(どうぞ)』」と渡す場面を選んでしまった。
言葉では表現できない、相手を思いやる行為がそこにあり、
それを嬉しそうに「ありがとう」と受け取るだけなのに、心に残った。
仲間で「分け合う」という行為こそ、人間だけの特性に違いない。
「仲間と一緒に・・それにこそ、幸せがあるような気がします」の台詞、
ある方からの手紙の一節だけれど、妙に納得した台詞となった。
それって、冒頭に紹介される絵本「月とマーニ」での会話、
「大切なことは、君が照らされていて、
君が照らしているということなんだよ」という台詞に繋がってくる。
「お月さんがいて、マーニがいる。マーニがいて、お月さんがいる」
なるほどなぁ。
P.S.「月とマーニ」
少年マーニは、自転車のカゴに月を乗せて、
いつも東の空から西の空へと走っていきます。
ある日、やせ細った月が言うのです。
「ねぇ、マーニ、太陽をとって。
一緒にお空にいるととっても眩しくって。
「ダメだよ、太陽をとったら困っちゃうよ」「どうして?」
「だって太陽とったら、君がいなくなっちゃうから。
そしたら、夜に道を歩く人が迷っちゃうじゃないか。
大切なのは、君が照らされていて、
君が照らしている、ということなんだよ」