ワイルド7 : インタビュー
丸山以外のメンバー全員がバイクの大型免許を持っており(丸山も撮影のために取得)、バイク・アクションに関しても相当な規模での撮影が見込めたはず。だが、ロケ地探しは困難を極め、結果、北九州と大分に決まったが、それも地道な交渉と地元の協力が不可欠だった。
「橋や市道、ある施設の持ち物などを一時的に占有させてもらいました。バイクは基本的に、スピードを出さないと疾走感が出ない。法定速度で走っていると画(え)にならないんです。100キロ出すためには封鎖しないと法律違反になってしまうので、そういう意味では大掛かりな撮影でしたね」
特に瑛太がヒロインの深田恭子とタンデムで、走っている車の間を抜けていくシーンのスピード感は見ている側も風を切るような感覚になる。これは大分の街の一部を完全封鎖し、加えて地元住民が車に乗ってエキストラとして参加してもらったことで実現した。「海猿」シリーズで“海洋アクション”の分野を確立しているが、さらなる新たな試みの連続は手探りだったという。
「ノウハウがあるわけではないし、やったこともないし見たこともない映像ばかりなので難しかったですね。カースタントのチームですらやったことがない。でも、解けない謎を解くような作業なので楽しいですよ。スタッフもキャストもそういう方が、が然力を発揮しますから。やっぱり、ルーティンワークになるのは面白くない」
当然、不安な部分もあったが、カットを重ねていくにしたがって手応えをつかみ、約2カ月半の撮影を終えて全体像が固まっていったという。随所に施されているCG処理に関しても、ドラマとの整合性を考慮してアナログにこだわっている。
「撮影が終盤にさしかかったころ、もう1回『ワイルド7』を撮ることになったら間違いなく10日以上短く撮れるなという話をしていました。周りには『もう1回撮りたくないですよ』って言われましたけれど(苦笑)。CGもデジタルな作業ですが、ドラマとCGの温度がずれてはいけない。徹夜して頑張っている、汗や気合、根性が前面に出てくるようなCGになるようにしました(笑)」
そして、完成した映画は原作の持つ硬質な雰囲気を保ちながら、よりスタイリッシュで洗練されたアクション・エンタテインメントとなった。ラストでは、その先を暗示させるような余韻を残す。
「アクションに特化すると、興味のない人にとっては退屈な時間になる。人間ドラマもないとお客さんは満足しない。いろいろな好みの人が見たいという気になる、“いいとこ取り”な作品にしたかった。その狙いはすごくいい感じで出ている気がします。この映画を通して、ワイルド7を好きになってもらえればいいと思っています。きっと好きになって、この先の活躍をもっと見たくなるはずです」
「海猿」シリーズで日本有数のヒットメイカーとなった羽住監督にとって、新たな代表作になりえるほどの確かな手応えがあったのだろう。その「海猿」はシリーズ第4作「BRAVE HEARTS 海猿」が来年7月に公開される。「では、その次に撮りたい題材は?」と向けてみた。
「『ワイルド7』がすごくヒットして、パート2をやりたい。こういうジャンルの作品はなかなかないので、もっといっぱい作れると面白いですよね」
ぜひとも実現させてもらいたい。