「雪に閉ざされた街、華麗なる一族の令嬢の失踪、パンクな衣装に身を包んだハッカーの女…。 最高の素材は揃っているが…」ドラゴン・タトゥーの女 たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
雪に閉ざされた街、華麗なる一族の令嬢の失踪、パンクな衣装に身を包んだハッカーの女…。 最高の素材は揃っているが…
スウェーデンのベストセラー小説を実写化した、ハリウッド版「ミレニアム」シリーズの第1作。
失意の底にいる敏腕記者のミカエルが、背中にドラゴンのタトゥーが入ったハッカーの女リスベットと共に、40年前の資産家令嬢失踪事件に挑むというミステリー映画。
監督は『セブン』『ベンジャミン・バトン』のデヴィッド・フィンチャー。
主人公ミカエルを演じたのは『トゥームレイダー』『007』シリーズの、6代目ジェームズ・ボンドことダニエル・クレイグ。
ハッカーの女リスベットを演じたのは『ソーシャル・ネットワーク』に続き2度目のフィンチャー監督作品への出演となったルーニー・マーラ。
第84回 アカデミー賞において、編集賞を受賞!
シリーズ累計発行部数1億部突破という、驚異のミステリー小説「ミレニアム」。
本国スウェーデンの実写版に続き、ハリウッドでも実写化することになり、その白羽の矢が立ったのが映像作家の鬼才デヴィッド・フィンチャー。
サスペンスを得意とするフィンチャーが「ミレニアム」という世界的ミステリー小説の実写化を手掛けるのだから、これがつまらない筈がない!…と思っていたのだが😥
いかにもフィンチャーらしいグロテスクかつスタイリッシュなタイトルバックは最高!🤩
女性ボーカルでカバーされた「移民の歌」に合わせて展開される、悪夢の様な映像。
「氷と雪の大地」「血塗られた物語」とか、映画の展開を暗示する様な歌詞の楽曲をテーマソングに持ってくるあたり、流石MV畑出身の監督という感じ。
リスベットを演じるルーニー・マーラも素晴らしかった。
ガリガリの体型、奇抜なヘアスタイル、無数のピアスなど、『ソーシャル・ネットワーク』で普通の女子大生を演じていた人と同じとは思えない程の変貌ぶりは見事!
とんでもなくハードなレイプシーンや、モザイクのがっつり入ったベッドシーン、乳首ピアスなヌードなど、体当たりすぎる演技には度肝を抜かれた。
金髪のウィッグで変装するシーンでは、「本当にこれがリスベットかよ!」といいたくなるほど、見た目と演技が変化しており、流石一流の女優はすげーなー😮とただただビックリ。
この映画の価値の8割はルーニー・マーラだと言っても良いのでは?
アナルレイプやエンヤをBGMにしての拷問シーンなど、惨虐描写の緊張感が凄かった。
こういうシーンを容赦なく描写してくれると、映画に緩急がついて全体のワクワク感もアップしますね。
その後のリベンジシーンも盛り上がるし。
人間の残忍性を描写させると、フィンチャーは本当に上手いですねぇ。
キャラクターや要所要所のシーンのインパクトはGOOD👍
全体的な興味の持続力も強く、退屈はしない。
しかし、映画として面白いかというと…
雪で閉ざされた静かな街、そこを支配する華麗なる一族、40年前に起きた令嬢失踪事件、背後に蠢くナチの影、次第に明らかになる陰惨な連続殺人事件…。
それに挑むのはジェームズ・ボンドとパンキッシュなハッカー女。
これだけ素晴らしい素材が揃っていながら、何故こんなにも中途半端な作品になってしまったのか…🤔
ミカエルとリスベットが合流してからがこの映画の本編だといっても良いだろう。実際彼らが合流してから話は大きく動くし物語も面白くなる。
ただ、そこに至るまでの助走が長ぇ。もっとテンポ良く描けなかったのか?
ミステリーの謎解きもわかりづらい。…というよりハナからミステリーの要素は重要視していないような気がする。
そう思えるほど、謎解きや犯人発覚までの展開があっさりしてる。
華麗なる一族の異常性もあまり見えてこない。もっとヤバい奴らの集まりだというふうに強調して欲しかった。
レイプや拷問シーンはあんなにノリノリだったのに…。実は本編には興味無かったんじゃないの?フィンチャー監督😥
令嬢失踪事件を解決した後、ミカエルが追っていた大物実業家をリスベットがまるで007のように追い詰めるという展開になる。
…ここいる?連続ドラマならともかく、映画としてはただの蛇足にしか感じなかった。事件解決して一件落着で良いじゃん。
ただリスベットの活躍を描きたかっただけ、という感じがして映画としての必要性を感じなかった。
ミカエルとリスベットが仲良くなっていく過程とか、2人が同じ画面に収まっているシーンとかをもっと見せて欲しかった。
はっきり言ってバディ・ムービーとしては物足らない。
ただのセフレに見えちゃって、クライマックスの切ないシーンでのリスベットに感情移入できなかったなぁ。
前半のそれぞれが単独で活動しているシーンを削って、2人がコンビを組んでわちゃわちゃするシーンをもっと増やして欲しかった。
数々の名作を生み出したフィンチャーの作品の中では、正直つまらない部類に入るかなぁ💦
素材は良いのだから、もっとミステリーの部分を重視して欲しかった。
あくまでもフィンチャーの作品群の中ではつまらない、というだけで悪い映画ではない。…が、でもなぁもう一歩だなぁ…という印象の一作です。