劇場公開日 2012年2月10日

  • 予告編を見る

ドラゴン・タトゥーの女 : インタビュー

2012年2月6日更新
画像1

“絶対あきらめない”資質でヒロイン役を奪取したルーニー・マーラ

デビッド・フィンチャー監督最新作「ドラゴン・タトゥーの女」で、全身ピアス&タトゥーの天才ハッカー・リスベット役に抜擢された女優ルーニー・マーラ。初来日しインタビューに応じた彼女は、26歳という若さながら、静かな口調ではっきりと自分の意思を語る姿が印象的だった。フィンチャー監督の前作「ソーシャル・ネットワーク」で演じた清楚な女子大生を本人のイメージに勝手にダブらせていたが、素顔のマーラは脆さと激しさを併せ持つリスベットに近いのかもしれない。(取材・文/本間綾香、写真/堀弥生)

画像2

経済誌ジャーナリストのミカエルと寡黙な天才ハッカーのリスベットが、40年前の少女失踪事件を追う「ドラゴン・タトゥーの女」。去る1月26日、第84回アカデミー賞のノミネーションが発表され、ヒロインのリスベット役を演じたルーニー・マーラは、主演女優賞のカテゴリーに候補入りした。

小さいころから女優志望だったというマーラにとって、初のオスカーノミネート。その興奮を真っ先に誰に伝えたのか尋ねると、「誰にも伝える必要なかったんです。みんなが私に電話をくれたので。たぶん、いちばん最初に話したのは父親だったと思います。すごく喜んでくれました」と、本人はいたって落ち着いた様子だ。

ベストセラー小説の映画化であり、すでにスウェーデン版の映画が大ヒット、そして今度は泣く子も黙る異才デビッド・フィンチャーが監督、という条件がそろい、リスベット役にはスカーレット・ヨハンソンをはじめ、多くの女優たちが名乗りを上げた。

「オーディションは、特にほかの作品と変わらないものでした。最初にキャスティングディレクターと会い、脚本の読み合わせをして、それから通常のスクリーンテストを受けました。続けて数回受けた後、ダニエル(・クレイグ)と一緒のスクリーンテスト、それからデビッドに見てもらうためのへア&メイクをした状態でのテストがありました。ハリウッドではごく一般的なプロセスだったと思います」

画像3

並みいるライバルたちの中からフィンチャー監督に選ばれたわけだが、自身のどんな部分が決め手になったと思うか聞くと、「それはデビッドに聞いてもらった方がいいと思いますが、私が推測するに監督はオーディションのかなり初期の時点で、私をリスベット役に決めてくれていたような気がします」と話す。

「それでもオーディションに2カ月以上かけたのは、周囲の人たちに主役は私だということを説得する必要があったからではないかと思います。また、オーディションの回数を重ねていく中で、デビッドは私の中にある“絶対にあきらめない”という、リスベットと同様の資質を見つけてくれたのではないでしょうか。私はリスベットを演じるためなら、何だってやるつもりでしたから」

フィンチャー監督の作品に出演した俳優たちはみな、そのテイク数の多さを口にする。「ゾディアック」のマーク・ラファロや、「ソーシャル・ネットワーク」のジェシー・アイゼンバーグらによると、1シーンで50回、60回は当たり前なのだとか。フィンチャー監督作2度目の出演となったマーラだが、「それがデビッドのメソッドなのです。どのシーンを何回撮ったかは覚えていませんが、とにかくたくさん撮りました。私も完璧主義なタイプなので、その点はまったく苦じゃありません」と余裕の表情だ。

「デビッドはとてもオープンで、俳優たちといろんな意見を交わしながらコラボレートして作り上げていきます。でも一方で、自分がこうと確信していることに関しては絶対妥協しませんし、ディテールまでとことん凝る人です。監督として技術的な知識はもちろん、物語をみせるという意味においても卓越したセンスを持っていると思います」

画像4

原作小説を読んで、特異な生い立ちをもつリスベットの複雑な内面に深く共感したというマーラ。「リスベットの中にある怒りは特殊なものではなく、どんな人間も多かれ少なかれみんな持っているものだと思います。彼女は言葉少ない人で、重要なことしか話さない代わりに、彼女の発する言葉には明確な意味と強さがあるのです」と説明する。

一度見たら忘れられない、リスベットの強烈なルックスは、「コスチュームデザイナーのトリッシュ・サマービルとデビッド、そして私の3人で決めたものです。外見的にこれまでにない挑戦が必要なことは覚悟していたし、イメージはできていたので、あとはたくさん話し合いをしながら絞り込んでいきました。いろんなことを試して、とても楽しかったです」

噂されている続編については、「私が知る限り、まだ正式には製作決定していないと思います」とのことだが、マーラが演じるリスベットの活躍とその変化を、まだまだ見てみたいと期待する観客は多いだろう。

「ドラゴン・タトゥーの女」の作品トップへ