「万人の心の中の大切な子供心を再起させる秀作」ヒューゴの不思議な発明 Ryuu topiann(リュウとぴあん)さんの映画レビュー(感想・評価)
万人の心の中の大切な子供心を再起させる秀作
巨匠とは言え、歳にはやはり勝てないのだろうか?
M・スコセッシ監督と言えば、私の中では、『タクシードライバー』を始めとし、『ニューヨークニューヨーク』『レイジング・ブル』などR・デニーロとのゴールデンコンビで撮影された作品が印象に残っている。
それらの作品の多数は、どちらかと言うと男性的な躍動感溢れる、痛快な画面で、熱く人々を魅了してきた。
ニューヨークの街、人種のルツボと言われるその街に起こる人々の多様な生き様を、臨場感有る映像を映画史にいつも創り上げてきた彼だ。
そんな、くせ者のスコセッシ監督ならではのカラーが溢れる群像劇が私は好きだった!
我が国日本では、黒澤監督がやはり、男臭いエンターテイメント映画を数多く制作してきたのだが、晩年は、『夢』などにみられるようフェミニスト的な、愛や夢と希望を真向から描き出した作品へと作風が変化した様に、スコセッシ監督も本作の様な可愛らしい、ファンタジー映画を作る様になったので驚いている。
しかし、そう言えばスコセッシ監督と黒澤監督はとても親交が深かったようなので、或る意味似たようなセンスを、同人は根底に持っているアーティストなのかも知れない。
主演のヒューゴを演じるエイサ・バターフィールドも『リトル・ランボー』でも個性的な少年を演じていたし、『縞模様のパジャマの少年』も見事な映画を頑張って演じていた。
イザベル役のクロエ・モレッツと彼が同年生れには見えないけれど、この2人の芝居の巧い子役を起用した事で、この映画は格段に出来が良くなったと思う。
ヒューゴとイザベルが裏口から映画館に忍び込んで、サイレント映画の名作を楽しむ辺りは何故か『小さな恋のメロディー』を思い出させるが、このシーンも監督の映画に対する熱い思い入れが強烈に感じられる。
ベン・キングスレーがメリエスを演じるのも何故かシックリとハマっている感じがして良かったな。『月世界旅行』を私は観ていないので、是非とも観たくなった!
ジュード・ロウがヒューゴの父と言うのも予想外に思える配役だが、良かったと思うし、何と言っても、映画をこよなく愛し続けているスコセッシ監督の映画へのオマージュ作品である本作ならではの目玉のキャスティングで、ピーター・カッシングと共に『ドラキュラ伯爵』シリーズや『フランケンシュタイン』などのホラー映画で、時代を風靡したあの名優クリストファー・リーを久し振りにスクリーン登場させてくれたのも見逃せない!
3Dにする必要価値が本当にあったか無かったのか、賛否の分かれるところだが、監督としては、常に新しい技術の工夫を凝らして、映画ファンを楽しませられる次回作を制作し、その為に、日夜研究し続ける情熱こそが大切なのだと言う監督の映画哲学が表れている作品なのだと思う。映像的には物凄く綺麗で、ファンタジー映画として気品が有り良かった。話しの展開に少々無理が有っても本作はファンタジーなのだ、野暮な事は言うまい。