アトムの足音が聞こえるのレビュー・感想・評価
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女優さんの足音もこんなおっさんが作ってたの?と驚かされるエピソー...
女優さんの足音もこんなおっさんが作ってたの?と驚かされるエピソードから始まる。効果音に騙され続けてきた一般庶民。
1950年代から活躍していた足跡。教育映画で血液の流れる音とか、何気なく聞き逃しそうだけど、全くウソの音なのだ。シンセサイザーという楽器がまだない頃から、電子音楽を操っていた大野松雄。中盤までは彼は登場せず、むしろ彼の影響で効果音技術の世界に入って行った人たちの仕事ぶり。
大野氏はすぐに仕事を辞めたりする、天才であるがゆえに一つの職場にこだわらない性格だったようだ。アトムで稼いだのに借金取りに追われ、行方知れずといった内容の作りになっていて、登場するのは後半。彼は70年代に障害児のドキュメンタリー映画制作に携わっていて、現在でも滋賀県にある施設で精神薄弱児の演劇の監督なんかをやっていた。
とにかくゼロから創り出す仕事。この世に存在しない音を一度作ってしまって、世に認知されたら存在するものになってしまう。逃げ出すということも、そうした仕事内容とよく似ている。
“音響効果”とその功績者にスポットを当てた非常に興味深い一見の価値ある作品
映画やドラマやアニメの技術に音響効果というものがある。
通な人ならば当然知っているが、そうでない人にはあまり知られていない。
映画は、日本の音響効果の第一人者、大野松雄氏に迫ったドキュメンタリー。
音響効果は、映画やドラマやアニメを見ていれば、誰もが聞いた事がある。
歩く音、ドアの閉まる音…作中の音はほとんど音響効果によるもの。勿論、アクション映画での銃撃音や爆破音、SF映画での非現実的な音も。
大野氏は「鉄腕アトム」での音響効果で知られ、シンセサイザーを活用したアトムの歩く音や独特の宇宙の音や未来音は誰もが聞いた事があるハズ。
その功績は後世にも多大な影響を与えている。
映画は「鉄腕アトム」に関わった60年代、記録映画作りに携わった70年代、後進の育成やコンサートを行う現在の姿を追う。
80歳になっても貪欲に音響効果を追い続ける氏の姿に、感服と職人魂を見た。
今日本で最も知名度のある音響効果マンは柴崎憲治氏辺りか。
なかなかスポットは当たらないが、米アカデミー賞ではちゃんと音響効果賞が設けられている。
この人たちの存在あってこそ映画やドラマやアニメは映えるのであって、まさに縁の下の力持ち。
音響効果という仕事や大野氏の功績を知る為にも非常に興味深い。
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