「昔はこういう“先を早く知りたい”ドラマが多かった」赤ずきん マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)
昔はこういう“先を早く知りたい”ドラマが多かった
VFXはあまり上等ではないが、それが却っておとぎ話の雰囲気を醸し出している。色調は美しく、とくに原題でもある赤いマントが鮮やかだ。
欧州で古くから伝承されてきた民話を、同監督作品「トワイライト~初恋~」のようなラブ・ロマンスものに置き換えているが、原話に出てくる「針の道」などが随所にアレンジされて取り込まれている。グリム童話の「赤ずきん」の有名なセリフや、「狼と七匹の仔山羊」からエピソードを拝借したり、子供が持つ残酷さも絡めた脚本が実に上手い。
登場人物の名前も凝っている。ヴァレリーは狼を使った名言を残したフランスの詩人ポール・ヴァレリーから、ピーターはプロコフィエフの「ピーターと狼」から、ヘンリーは1935年の「倫敦の人狼」で狼男を演じたヘンリー・ハルからきているものと思われる。
さて物語だが、村の祭り(この祭りのシーンが中々いい)から一転して、誰が人狼なのか分からない恐怖に転ずる。隣人や友人はおろか、家族でさえ信用できない。通常のミステリーものなら徐々に証拠が集められ犯人が特定されていくが、この映画では誰もが最後まで怪しい。いまどき珍しく、推理力を煽る作品に仕上がっている。そこに恋物語を重ね、しかも恋人さえ人狼かもしれないというクドさ。昔はこういう“先を早く知りたい”ドラマが多かった。若者の心を捉えるのが上手い監督といわれているが、今も昔もそのテクニックの基本は不変なのだろう。
ブライアン・レイツェルによる音楽も物語にぴったりだ。
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