「岡田君、あおいちゃんのファンにはお勧めの映画!」天地明察 Ryuu topiann(リュウとぴあん)さんの映画レビュー(感想・評価)
岡田君、あおいちゃんのファンにはお勧めの映画!
この作品の印象を一事で述べるなら、ラブコメだ。
岡田准一演じる安井算哲の物語と言うよりも、宮崎あおい演じる、えんの可愛らしさ満開!の映画で、その二人を見守り、応援する村瀬塾を営む佐藤隆太の物語だ。
そう、良く考えてみれば、本作の監督は滝田洋二郎監督なのだから、コメディー映画タッチになるだろう事を予測出来ずに観に行ってしまった、私自身の失敗したパターンでした。映画館で何度か観た、予告編では、わりとシリアスな感じに観て取れたのだが・・・
やはり予告編は巧く作りますね!予告では安井算哲の命掛けの仕事人生が描かれる、ロマンを感じる気がしていたのだ。
私は原作を読んでいないのだが、日本で初の天文学者・安井算哲の物語となれば、私同様に、もう少しシリアスタッチの映画のイメージを抱いて映画館へと足を運んでしまう人々がいても自然の事と思うのだが、どうしても今の日本は、映画も、TVもお笑い路線ばかりにしてしまう傾向が強く、これも時代カラーで我慢しなければならないのだろうか?
中井貴一演じる光圀が庭で、人生50年と舞を披露しているシーンが有ったが、この時代は正に人生50年で、今日の日本人と平均寿命が違うため、当時の人々は皆今日の人と肉体年齢が同年でも、精神年齢はずっと高く、大人なのだ!何しろ50年で人生が終わってしまうのだから、その短い人生の時間の中で、何を自分はその生涯で成し得る事が出来るのかもっと日々を大切に生き、もっと真剣に考え、1日1日を江戸の人々は大切に生きていた事だと思うのだ。余りにも軽薄な感じだ。
当時は鎖国していたとは言え、オランダなどから来ていた、外国人の文献では当時の日本人の精神性や、文化水準や、倫理観や教育水準の高い事が記録として残っているのだ。
映画として面白味を演出する為か、伊藤重高孝と建部昌明との測量の旅の様子などは、全面コメディータッチで描いているが、これはコミック漫画では無く、実写の時代劇なのだから、ここまでいくと、観ていて腹が立って来てしまう!
折角の良いセリフが生きてこなくなり、セリフを言っていても、何の重みが無くなってしまうのだ!これは役者の芝居の問題では決してない。
江戸幕府政治も安定したこの時代、今風に言えば「平和ボケ」して命掛けで、何か世の為に、後世の人々の為になる事を成し遂げようと、真剣に生きようとする者がいないと嘆く光圀が、今の日本を観たらどう思うだろうか?
数億円の製作費を投じて制作される映画なのだから、皆、命掛けの真剣勝負をして制作に当たっている事は事実だろうが、この様なコミック漫画タッチの時代劇からは、何の気迫も感じられない!みな良いキャストを揃えていながら、残念な限りだ!
公開5日目だと言うのに、映画館には観客は私を含めて8人しか居なかった。
「おくりびと」も最初はガラガラだった。この映画には、「おくりびと」のような奇跡は起こるのだろうか?この映画がヒットしたなら、それこそ本当の奇跡だ!