「世代間交流の必要。」キツツキと雨 ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
世代間交流の必要。
素直に…面白かった、愉快に笑えた作品。
とり立てて、褒め称える仰々しさもなく地味で単純で静か。
そもそもキツツキは、雨の降る日に木をつつかないもんねぇ。
木こりも監督も雨上がりを期待しながら心を通わせていくのだ。
…しかし、観ていて思った(爆)
私のようなオバサンも同じ、今の若いのが何を考えてるのか
サッパリ分からない^^;
役所の木こり同様、何を考えてる?そこの若いの!なのである。
でも若いのからすれば、一体このオバサンは何を考えてるんだよ
と、イライラさせられること、この上ないのかもしれない^^;
若い頃にはスラスラとできたことが、どうもすんなりいかない。
今日も会社で。お店のレジの前で。友人と話しながら。
あ~間違えた。上手く取り出せない。えっとそれ誰だっけ?を
繰り返しているわけだ。
だから助け合いという精神で(爆)世代間交流は大切なのだな。
さて。。
雨を巧く情景化しながら、中年の木こりと新人監督の交流を
世代間ギャップありありで楽しく展開させている本作。
「南極料理人」で培ったあの雰囲気をさらに推し広げつつ、
人と人とが関わる過程を映画製作に協力することに置き換え、
まずは興味を持つところからすんなりとお互いの領域に入る。
木こりがゾンビを理解するか?(爆)なんていう心配は無用で、
素直に馴染んでいく木こりの親父・克彦が、面白くて頼もしい。
自身は妻を亡くして以来、息子とギクシャクしているものの、
日々の生活をきちんとこなし、仲間とワイワイ語り合う彼には
おそらく多くの共感が得られる描き方だ。
それに対し新人監督としてこの村にやってきた幸一(小栗)は、
対人恐怖症か!?と思えるほど臆病で言葉もなく、キビキビと
指示を与える助監督に喝を入れられる始末。木こりが監督を
使えないADと勘違いするのも、ごもっともと言いたくなる。
そこそこの才能と財力があっても、彼には忍耐力もなければ、
豊かな人材をどう活かすかの知恵も指導力もない。
まず人として新人だから…という立場の関門拠点にいるのだ。
そんな二人がどう助け合って作品を完成まで導くかがポイント。
穏やかで厳しい自然風景と相まって、二人が本音を吐露する
(食べ物を介した)対話風景に、前作同様こちらまでお腹が鳴る。
親子じゃないんだけど、親子みたいに頼り頼られる存在と関係。
却って他人同士の方が素直に腹を割って話せるのかもしれない。
そういえば私も若い頃、親ではない親年齢の知り合いに
たくさんの助言をもらい励まされ、それを訓示のようにしてきた。
そしてその先輩からは、若さと元気をもらったよ♪と言われた。
う~ん、やっぱりお互いに必要なんだなぁ。
南極~の時は内容が内容だけに、料理のシーンが多かった。
今回はそういう設定ではないが、とにかく多くの料理が出てくる。
そしてそれが、ひとつひとつ、なにより美味しく見えて羨ましい。
まずは腹ごしらえ。
食べ物を美味しく描く映画に悪い作品はないと、信じている私は
やっぱり今作の虜になり、最後までニヤニヤしながら観続けられた。
文句なく巧い!役所広司が、はじめは木こり…?なんて心配したが、
全く心配におよばなかった。海外での受賞も納得の会心の演技。
観終えてお腹いっぱいになるが、消化もすんなりの心地良い作品。
(映画製作の舞台裏も沢山観れて面白い。山崎努はその場をさらう巧さ)