「素直になれない大人たちは不器用な愛を伝える」RAILWAYS 愛を伝えられない大人たちへ 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
素直になれない大人たちは不器用な愛を伝える
電車の運転士の人生を綴った「RAILWAYS」の第2弾。
今回主人公に扮するのは、三浦友和。妻に余貴美子。
芸達者二人の共演は、ある意味、贅沢。
定年退職を控えたベテラン運転士の徹。
見始めてすぐ、つまらん男だと思ってしまった。
寡黙で真面目、冗談の一つも言わない。
仕事には厳しく、新人にとっては怖い存在。
職場に居たら、あまりお近付きにはなりたくない…。
家でも亭主関白。それが原因で妻との間に溝を作ってしまう。
定年後は妻と旅行を考えていた徹だったが、妻の佐和子は在宅ケアの仕事をしたいと切り出す。
猛反対&激怒する徹。佐和子は家を出る…。
徹は定年まで新人運転士を教育中。
その新人運転士、恋人との関係で仕事に身が入らない。
徹は「運転士失格だ」と叱咤するが、徹自身もそうなのが皮肉。
表情には出さないが、内心は動揺。
佐和子が一旦家に戻った時、転びそうになりながら家の中に駆け込むが…いざ顔を合わせると、冷静さを装う。
素直になれない。
佐和子が在宅ケアの仕事をしたいのには理由があった。
また、これまでずっと夫に尽くし、今度は自分の為に時間を使いたい。
そんな佐和子の方にどうしても感情移入してしまう。
溝は元通りにならず、遂には離婚届を出す佐和子。
この時、離婚届と共に絆創膏も出す。夫の手の擦り傷を見逃さなかった。
細かい気配りが利き、主婦の鑑!
前半〜中盤は丁寧に話が語られていたものの、中盤〜後半はちょっとご都合主義でベタな展開なのが惜しい。
雷で停車した車内で一人の老婆の体調が悪くなる。実は、妻がケアを担当している老婆。
連絡が取れなかった妻と連絡が取れ、働く妻の姿を見て、徹の気持ちは変わる…。
ベタだけど、ストレート。
最初はつまらん男だと思っていた徹も、見ている内に、不器用な人柄が伝わってくる。
愛を伝えられない大人たち。
伝え方は若者の方が長けているかもしれないが、その分深い。
最後は初々しいくらいの愛を伝え、夫婦愛を謳う。
鑑賞は是非、ご夫婦で。
第2弾だが、中井貴一主演の前作とは繋がりは無い。
主演や設定を変え、シリーズ化していくのはいいかも。
製作は松竹。松竹は「男はつらいよ」「釣りバカ日誌」に続くシリーズ作品が作れていない。「築地魚河岸三代目」も結局あれ一本。
本シリーズは作品も好評で、松竹ならではの人情もある。