「「これからの20年は長いぞ-」」RAILWAYS 愛を伝えられない大人たちへ マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)
「これからの20年は長いぞ-」
運転士ひとすじで生きてきた男の不器用で頑なな姿を三浦友和が後援。
60を間近にして妻に出ていかれた夫の焦りと憤りに、同情しながらも意地悪く笑ってしまう。
余貴美子もいいが、ここはどうしても男目線で観てしまう。おそらく、女性は余貴美子に感情移入して観てしまうのではないだろうか。「“おっ”じゃなく“ペッ”」の台詞にニンマリしていたに違いない。
定年を機に残された人生をどう過ごしていくのか、同じ年代として心に残るのは米倉斉加年が発する言葉「これからの20年は長いぞ-」だ。実感のある言葉から、人生の3/4ほどを終わってしまう身として、勇気をもらったような気がする。
まだまだ終着点を考える時ではない。まだまだ何かに挑戦できる。それに見合うだけの時間が残っている。この作品が伝えたかったのは、そこにある。
長い冬が終われば、温かい日差しの春がやってくる。終着駅も、新たな旅の始発駅になる。
鉄道会社の全面協力で、臨場感のある運転室の様子や、電車が走る様々なロケーションが、新たな人生の岐路に立つ夫婦のドラマを活き活きとしたものにした。
監督の蔵方政俊、これが初監督だが、作品から人間味のある優しさが伝わってくる。
また、この映画はひとつの警告を発している。
本気で別れる気がないのなら、安易に離婚届の用紙など置いて家を出たりしないことだ。皆が皆、この二人のように第二の人生を踏み出せるとは限らない。
あることがきっかけで、妻の仕事ぶりを見ることになる徹。その仕事に打ち込む真摯な姿に、雨の中、同じ職業人として佐和子に敬意を表した徹の仕草にグッとくる。いよいよ、徹の大きな決断によってドラマはラストを迎える。
p.s. シリーズ1作目「RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語」を見てみたくなった。