劇場公開日 2011年12月3日

  • 予告編を見る

「何故身近で大切な人に優しい声が掛けられないのだろうか?」RAILWAYS 愛を伝えられない大人たちへ Ryuu topiann(リュウとぴあん)さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5何故身近で大切な人に優しい声が掛けられないのだろうか?

2011年12月1日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

幸せ

この映画は人生の秋から冬へと向かう一組の夫婦の生き方を描いた心温まる作品だ。
私の周りでも子育ても終わり、何時の間にか、夫婦の間に心の溝が出来てしまっていたから、お互いに身軽になった方が、余生を楽しく、本当の自分らしく生活出来るからと離婚をすると決断を下した友人も何組かいる・・・
でも、それホントに後悔はしないの?それで本当に幸せに暮せるの?死ぬ時にそれで後悔せずに、思い残さず逝けるのか?といつも離婚すると言うそんな友人には聞けない問いだけが疑問として残るのだ。
私はリストラ体験者である為に、一つの仕事を勤続42年も続けられた幸せな人がこの不景気な日本の社会で、まだ何処かにいるのか!そして、こんなに無口で、不器用に、無愛想で、仕事に一筋に向き合っている亭主関白な夫がいるのだろうか?と何度も、何度も疑問を持ちながらも、この滝島と言う1組の夫婦の物語の旅に乗り込んで一緒に彼らの人生を臨むと何時の間にか、滝島夫妻の友人になってしまった錯覚すら憶える程に感情移入出来た映画だった。それはきっとこの作品が、年を重ねた夫婦の心の変化を細かく細かく、丁寧に重ね重ね演出していたからこそ、しんみりと感情移入出来たのだろう。
未だに、三浦友和さんが定年退職を直近にした親父の役をもうするのか?信じられない。
自分も随分と年を重ねて来たものだと変なところで、感慨深くなってしまうのだったが・・・
富山県が舞台のこの映画は、未だ富山を旅した事が無い私でもとても、美しい自然と、美しい街並みを数多くこの作品は捉えているので、映画を観ながら旅行気分も同時にたっぷりと満喫出来た。
この滝島夫婦の内面を巧く自然の原風景で表現していて、家庭では言葉少ない滝島の人間像が、画面から汲み取れる。
そして最後には、結局人は何故生きるのか?と言う疑問へとぶち当たってしまうのだが、その答えは、観る人、一人一人で相違があることだろうが、そんな誰でもがぶち当たる人生の答えを探す旅でもこの映画は存在する。
「旅は道連れ、世は情け」と言うではないか、人生には道連れが必要であると私は考えるのだが、そうは思わない人もいる。その答えはこの映画を観ながらゆっくりとお一人お一人考えて欲しいものだ。晩秋の今みるにはもっとも適した映画である
定年以降の時間が長いと考えるかそれとも、人生そのものが短い一瞬の出来事と捉えるかも一人一人それぞれの思いがある。
定年後の人生設計が出来ている人も、或いはこれからゆっくりと考えてみようと期待している方にも、きっとこの映画は1つのある夫婦の例として参考になる事だろう。
人生幾つになっても、再スタートは出来る事をこの映画は教えてくれた。そして、若い頃に、脇に置いて来た夢をもう一度、試して生きるのも新たな自分との付き合い方であるのかもしれないね。人間幾つになっても、何故生きるのか?その意味を見つけ出す事こそが、生きると言う事なのかも知れない。私も後どれ位人生が遺されているのかは解らないが、後悔だけはしないで生きたいとこの映画を観て素直に考える今日である。

ryuu topiann