「作り手の意図を知るとまったく違う作品に見えてくる」第九軍団のワシ 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)
作り手の意図を知るとまったく違う作品に見えてくる
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史劇映画ではあまり描かれることがなかった、ローマ帝国支配下のスコットランドを舞台にした風変わりな作品。ローマ帝国の軍人がチャニング・テイタムというキャスティングの時点で、サッパリ古代ローマ人には見えずミスキャストだと思ってしまうのだが、後からローマ人がアメリカ人のアクセントで喋ることにちゃんと意図があったことを知って驚く。
そもそもハリウッド映画では古くから、ローマやギリシャを舞台にした史劇映画ではイギリスのアクセントで喋らせることで時代感を出すことがお決まりのパターンだった。しかし本作では敢えてアメリカのアクセントにすることによって、ローマ帝国の帝国主義を現代のアメリカになぞられている、というのだ。
なんだかよく知らない時代のお話も、現代の写し絵であると知ると見え方が随分と変わってくる。映画は必ずしも素養や知識や事前の予習が必須ではないと思っているが、作り手の意図を知ることでまったく違う作品に見えてくるパターンとして、興味深い成功例だと思う。ケビン・マクドナルドは世間的に過小評価されていると思っているが、やはり一筋縄ではいかない映画作家だと教えてくれる1本。
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